マイクロソフトのAI投資はいつ成果を上げるのか?株価下落の背景と今後の展望

米国株市場において、AI関連銘柄が軟調な動きを見せる中、特にマイクロソフト(MSFT)の株価が大きく下落しています。2024年7月のピークから約18%下落し、2025年3月には2024年1月以来の安値を記録しました。ブルームバーグの記事「Microsoft’s Fading AI Mojo Keeps Shares in Lengthy Purgatory」によると、この背景にはAI投資の収益化の遅れや、データセンターの容量不足などがあるようです。

本記事では、ブルームバーグが報じたマイクロソフトの現状と今後の見通しについて紹介します。

AI投資が売上成長に反映されないことへの失望感

ブルームバーグの記事によると、マイクロソフトはAI技術の開発と導入に数百億ドルを投じていますが、その投資が短期的な売上成長に十分に反映されていないことが投資家の不安を招いています。

ジャニー・モントゴメリー・スコットのチーフ投資ストラテジスト、マーク・ルスキーニ氏は、マイクロソフトのビジネスモデルの安定性を評価しつつも、現在の市場環境ではAI投資が明確な成果を生み出さなければ、株価の下落を食い止めるのは難しいとの見方を示しています。

「マイクロソフトは、一貫したキャッシュフローと予測可能な売上を持ち、サブスクリプションモデルが安定している企業だ。しかし、それでも市場全体の下落から免れることはできない。AIが生産性を向上させ、大きな売上につながると期待されていたが、今は『実際に成果を見せてほしい』という状況になっている。」

株価の下落と市場との対照的な動き

ブルームバーグの記事では、マイクロソフトの株価がナスダック100指数やソフトウェア関連ETFの上昇とは対照的に低迷していることが指摘されています。過去6カ月間のパフォーマンスは、他のハイテク株と比較しても見劣りするものでした。

特に、1月の決算発表後の株価の動きが注目されています。マイクロソフトのクラウド事業「Azure(アジュール)」は引き続き成長していましたが、データセンターの容量不足により需要に対応しきれない状況が明らかになりました。また、AI関連サービスの売上成長も、投資家の期待を下回るペースで進行していることが失望感を生んでいます。

AI投資の巨額な支出とデータセンター戦略の変更

ブルームバーグの報道によると、マイクロソフトは2025年度にAIデータセンターの拡充に800億ドルを投じる予定です。しかし、TDカウエンのリポートによれば、米国内のデータセンター容量の一部リースをキャンセルしたとの情報もあり、設備投資の最適化を進めている可能性があります。

さらに、中国のAIスタートアップ「ディープシーク(DeepSeek)」が、より効率的なAIモデル開発手法を発見したと主張して以来、マイクロソフトはAI分野での競争を激化させています。加えて、ChatGPTを開発するオープンAI(OpenAI)との提携関係も、市場からの注目を集めています。

エバコア・ウェルス・マネジメントのポートフォリオマネージャー、マイケル・カークブライド氏は、この状況について次のように分析しています。

「マイクロソフトとオープンAIの関係は、長期的にはプラスになる可能性が高いが、短期的には評価が数ポイント下がることも考えられる。」

バリュエーションの低下と長期的な成長期待

ブルームバーグの記事では、マイクロソフトのバリュエーションが過去2年間で最も低い水準にあることが指摘されています。現在、株価は予想売上の27倍以下で取引されており、2024年7月のピーク時の35倍を大きく下回っています。この倍率は過去10年の平均をわずかに上回る程度であり、株価の割高感は薄れています。

また、アナリストの予測によると、マイクロソフトの売上は2025年度に約13%成長し、その後の2年間で成長ペースが加速する見込みです。純利益についても、2025年度に11%増加し、その後も成長が続くと予測されています。

ブルームバーグが追跡しているアナリストの90%以上が「買い」の評価を維持しており、現在の株価はアナリストの平均目標株価を32%下回る水準で推移しています。

株価は「健全な水準」にあるとの見方も

ブルームバーグの記事では、マッケンジー・インベストメンツのポートフォリオマネージャー、アルプ・ダッタ氏の見解も紹介されています。

「マイクロソフトや他のマグニフィセント・セブンは、以前は過大評価されていたが、現在はより適正な評価を受けている。同業他社と比較しても株価はやや割安に見える。マイクロソフトの品質や成長の可能性は依然として非常に優れており、その状態が維持されている。現在の株価水準は非常に健全だと考えられる。」

まとめ

ブルームバーグの記事によると、マイクロソフトの株価はAI投資の収益化の遅れやデータセンターの供給不足などが原因で下落しています。しかし、長期的にはAI分野での成長が期待されており、アナリストの間では引き続き「買い」の評価が優勢です。

短期的には市場の不透明感が続く可能性がありますが、マイクロソフトの安定したビジネスモデルとAI技術の進展が、将来的な売上成長を支える要因となります。現在のバリュエーションを考慮すると、長期投資家にとっては魅力的な水準にあると考えられます。

今後も、マイクロソフトのAI戦略や市場の反応を注視していくことが重要になりそうです。

*過去記事はこちら マイクロソフト MSFT

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