エヌビディア(NVDA)の株価は、最新のAIチップが輸出規制に違反して中国に流出しているとの報道を受け、3月3日(月)の米国市場で8.69%下落しました。これは、2024年9月以来の安値となります。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、エヌビディアの最新AIチップ「ブラックウェル」が、近隣地域で登録された法人を通じてサードパーティの再販業者経由で中国に届いていることが判明しました。これにより、米国の輸出規制に違反している可能性が浮上し、投資家の間で懸念が広がっています。
シンガポールが調査を開始:デルとスーパーマイクロへの影響
シンガポール当局は、エヌビディアの顧客であるデル(DELL)とスーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)が製造するサーバーに関して、米国の輸出規制違反の可能性があるとして調査を開始しました。特に、ブラックウェルGPUを搭載したサーバーがシンガポールからマレーシアへ出荷される過程で、中国への密輸に関与している可能性が指摘されています。
このニュースを受け、デルの株価は7%下落し、スーパーマイクロの株価は13%の急落となりました。スーパーマイクロは先週も30%近い下落に見舞われており、投資家の警戒感が高まっています。また、英国の半導体設計企業アーム(ARM)も8%下落しました。
エヌビディアの株価下落が続く:過去5日間で12%以上の下落
エヌビディアの株価は過去5日間で12%以上下落し、3月3日の終値は114.06ドルとなりました。これは、昨年9月10日以来の安値です。
2月には、ディープシークが開発した安価な中国製AIモデルが米国のハイテク株全体の下落を引き起こしたこともあり、エヌビディアの株価は117ドル前後まで下落していました。今回の報道により、エヌビディアへの規制強化が懸念され、さらなる売り圧力が加わっています。
エヌビディアの広報担当者は、メディアの取材に対し、「匿名のトレーダーが無許可の国でブラックウェル製品を入手、配送、インストール、使用、保守することはできない」と述べました。同社は、違反の可能性があるすべての報告を調査し、適切な措置を講じるとしています。
AIサーバー市場への影響:エヌビディアの売上に110億ドル貢献
エヌビディアは先週発表した決算報告で、最新のブラックウェルAIサーバーシステムの設計が2024年第4四半期の売上に110億ドル貢献したことを明らかにしました。ブラックウェル製品は、以前に不具合や過熱の問題が報告されていたものの、本格的な生産に成功しています。
同社の最高財務責任者(CFO)であるコレット・クレス氏は、決算発表後の電話会議で、「中国におけるデータセンター向けの売上割合は、輸出規制開始時の水準を大きく下回っている」と説明しました。バイデン政権は2022年にエヌビディアのチップに対する輸出規制を初めて実施しており、現在の状況では中国向けの出荷量が大幅に制限されています。
バイデン政権の規制強化とトランプ氏のさらなる制限検討
米国政府は、エヌビディアの中国向け輸出規制をさらに厳格化する可能性があると報じられています。特に、中国市場向けに特別設計されたHopper GPUのバージョン「H20」に対する制限が拡大される可能性が指摘されています。
エヌビディアは、2022年にバイデン政権の規制を遵守するため、中国向けの特化型GPUの製造を開始しました。しかし、新たな規制が導入されれば、現在の販売モデルも維持できなくなる恐れがあります。
インテルの最新チップ製造プロセスの影響
さらに、エヌビディアとライバル企業であるブロードコム(AVGO)が、インテル(INTC)の最新チップ製造プロセス「18Aプロセス」をテストしているとの報道も株価下落の要因となりました。インテルは、過去に製造プロセスの遅延や技術的問題を抱えており、最新の18Aプロセスもすでに四半期単位での遅延が発生しています。
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まとめ
エヌビディアの株価は、中国への輸出規制違反の報道を受けて急落し、過去5日間で12%以上下落しました。シンガポール当局による調査、バイデン政権の規制強化の可能性、さらにトランプ氏による追加制限の検討が重なり、エヌビディアを含むハイテク株全体に影響を与えています。
今後もエヌビディアの株価は、米中関係や米国政府の規制動向に大きく左右される可能性があります。投資家は、引き続き米国の輸出規制や半導体市場の動向を注視する必要があります。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA