セールスフォースとグーグルがクラウド契約を締結、AI市場での競争激化へ

セールスフォース(CRM)は、アルファベット(GOOGL)傘下のグーグルと、数十億ドル規模のクラウド契約を締結しました。この契約は、マイクロソフト(MSFT)のAIおよび生産性ツールを使用している企業顧客を獲得するために、両社が戦略的に提携したものです。

セールスフォースはこれまで主にアマゾン・ドット・コム(AMZN)のクラウドサービスを利用していましたが、今後7年間でグーグルのクラウドサービスに少なくとも25億ドルを投資 することを確約しました。この契約により、セールスフォースの顧客は、顧客管理ソフトウェア、自律型AIアシスタント「Agentforce」、Data Cloud製品をグーグルのクラウド上で稼働させることが可能になります。

大手テクノロジー企業のAI市場競争が激化

今回の契約は、大手テクノロジー企業がAI強化製品やサービスの提供を拡大し、より多くの企業顧客を獲得しようとしていることを象徴しています。マイクロソフトは企業向け生成AIの分野で先行しており、フォーチュン500企業の大半が同社のAI生産性ツールをすでに導入しています。しかし、導入の進捗が期待よりも遅れることがあり、そこにグーグルが入り込む余地が生まれています。

グーグルは今回の契約により、セールスフォースの市場をリードする顧客管理ソフトウェアと連携し、AIサービスをさらに強化することが可能になります。

セールスフォースとグーグルの戦略的提携の背景

グーグルクラウドの最高経営責任者(CEO)であるトーマス・クリアン氏は、「両社にはすでに多くの共通顧客がいるため、より緊密な製品統合を進めてきた」と述べています。今回の提携により、企業顧客はグーグルのWorkspaceを活用して、見込み客向けの文書を作成し、セールスフォースの顧客データを活用しながら、グーグルのGemini AIモデルの情報を使って提案内容を最適化できるようになります。

クリアン氏は「セールスフォースはデータをどこにでもホストできます。しかし、当社のテクノロジーの質と顧客基盤の成長を評価した結果、グーグルクラウドとの提携を選んだのだと思います」と説明しました。

セールスフォースは、グーグルだけでなく、マイクロソフトやオラクル(ORCL)ともクラウドサービスの協議を進めており、今後さらなるクラウド契約の拡大が期待されます。

セールスフォースのAI戦略とクラウド契約の影響

セールスフォースは、昨年AI戦略を大幅に変更し、AIエージェント技術の強化 に重点を置くようになりました。AIエージェントとは、顧客サポートや営業開発などの業務を人間の監督なしに自律的に遂行できる技術です。生成AIツールは従来のソフトウェアよりも大規模な計算能力を必要とするため、追加のクラウドリソースの確保が重要 になります。

グーグルは、ウェイフェア(W)やアクセンチュア(ACN)などの企業がすでにセールスフォースのアプリケーションをグーグルクラウドに移行し始めていると発表しました。また、この契約の一環として、セールスフォースは「Agentforce」の顧客に対し、グーグルのGeminiモデルの利用を許可 することも決定しました。

セールスフォースCEOとマイクロソフトの競争激化

セールスフォースのCEOであるマーク・ベニオフ氏は、マイクロソフトのAI戦略、特にAIアシスタント「コパイロット」に対して、たびたび批判を行っています。ベニオフ氏は「コパイロットの機能には失望させられる」とコメントしており、昨年10月にはX(旧Twitter)で「セールスフォースのAIエージェントのほうが優れている」と発信しました。

これに対し、マイクロソフトの広報責任者であるフランク・ショー氏は、「セールスフォースの戦略はマーケティング重視であり、実質的な技術の進化は二の次だ」と反論しました。

セールスフォースの売上と今後の展望

セールスフォースは、2月26日に決算発表を行う予定であり、投資家はAIツールの導入による売上向上の兆候 に注目しています。ベニオフ氏は今年1月に、「今四半期中に数千件のAgentforce契約を締結する予定だ」と発表しており、新たなAI戦略が同社の業績にどのように影響するかが焦点となっています。

まとめ

今回のセールスフォースとグーグルのクラウド契約は、AI市場における競争をさらに加速させる重要な動きとなりました。マイクロソフトのAI戦略に対抗する形で、セールスフォースはグーグルクラウドとの提携を強化し、企業向けAI製品の拡充を進めています。

今後、企業のAI導入が加速する中で、セールスフォースとグーグルのパートナーシップがどのように発展し、競争環境に影響を与えるのかが注目されます。特に、AIエージェント技術の進化と、それに伴うクラウドコンピューティングの需要拡大は、セールスフォースのビジネス成長にとって重要なポイントとなりそうです。

*過去記事「セールスフォース:AIエージェントが拓く未来の投資チャンス

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