米国株式市場はこの1年間で力強い上昇を続け、S&P500指数は約20%の上昇を記録しました。しかし、この市場環境の中でも、大きく出遅れた銘柄が存在します。
ビスポーク・インベストメント・グループの共同設立者であるジャスティン・ウォルターズ氏は、この1年間で30%以上下落したS&P500銘柄のリストを作成しました。これらの企業は、前年比で50ポイント以上市場をアンダーパフォームしており、逆張り投資家にとって興味深い存在といえます。
市場がAI銘柄に集中する中、逆張りのチャンスはあるのか?
現在、市場の注目はハイテク株、とりわけ人工知能(AI)関連銘柄に集中しています。しかし、ウォルターズ氏は「市場がAI銘柄の上昇に夢中になっている中、打ちのめされた銘柄に目を向けることで新たな投資機会を見出す価値がある」と指摘しています。
今回のリストには意外な大企業が多く含まれており、投資家にとって馴染みのある企業も少なくありません。例えば、ナイキ(NKE)、エスティ・ローダー(EL)、コンステレーション・ブランズ(STZ)、バイオジェン(BIIB)、メルク(MRK)、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)、ダラー・ゼネラル(DG)、アドビ(ADBE)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、インテル(INTC)といった企業が挙げられます。
出遅れ銘柄の中で注目すべき企業は?
すべての出遅れ銘柄が回復するとは限りませんが、投資家によっては割安と考えられる銘柄もあります。例えば、インテルは2021年以降、業績の低迷が続いていますが、2024年は利益の谷の年だった可能性があるとウォルターズ氏は分析しています。ウォール街の予測では、インテルの一株当たり利益(EPS)は2029年まで着実に成長するとされています。AMDも同様のパターンを示しており、AIブームの中で競争力を維持する可能性があります。
また、各セクターで前年比の下落率が特に大きかったのは、ナイキ、エスティローダー、モデルナ(MRNA)、ハンティントン・インガルス(HII)、セラニーズ(CE)、AES(AES)などです。
アナリストの評価は?
これらの銘柄について、アナリストの評価は分かれています。ファクトセットが追跡するアナリストのうち、モデルナに強気な評価をしているのは4分の1にすぎません。しかし、アナリストの平均目標株価である59.95ドルは、現在の株価の約2倍になる可能性を示唆しています。
同様に、メルクやAMDの株価もアナリストの予想より30%ほど割安な状態とされ、バイオジェンに至っては半数以上のアナリストが現在の株価は過小評価されていると指摘しています。AESは、アナリストの平均目標株価に達すれば、3分の2近く上昇する可能性があるとされています。
割安な銘柄を狙う投資戦略
市場では、S&P500が予想売上の22倍以上、AI関連を含む「マグニフィセント・セブン」のハイテク株は約30倍で取引されており、非常に割高な状況となっています。一方で、バイオジェン、メルク、セラニーズ、AESは予想売上の10倍以下で取引されており、ハンティントン・インガルスも10倍を超える水準にとどまっています。
現在の市場環境では、成長株の勢いに乗るのも一つの戦略ですが、過小評価されている銘柄を狙う逆張り投資も有効な選択肢になり得ます。市場の流れに逆らうのは容易ではありませんが、慎重なリサーチを行うことで、将来的に大きな利益を得るチャンスがあるかもしれません。
まとめ
現在の米国株市場はAIブームによる強気相場が続いていますが、その一方で大きく売られた企業も多く存在します。インテルやAMDのように、業績の回復が期待される銘柄もあれば、ナイキやエスティ・ローダーのように、消費者動向の変化が影響している企業もあります。
アナリストの目標株価や予想売上倍率を考慮しながら、これらの銘柄を精査することで、新たな投資機会を見出すことができます。強気相場の中で出遅れた銘柄に注目し、長期的な成長ポテンシャルを見極めることが重要です。