米国のテクノロジー企業による人工知能(AI)インフラへの巨額投資に対して、ウォール街では慎重な見方が広がりつつあります。特に、アルファベット(GOOGL)の設備投資が市場予想を大きく上回ったことで、投資家の警戒感が強まっています。
アルファベットの決算発表と株価の反応
アルファベットは2024年第4四半期決算を発表しましたが、翌営業日である2月5日の市場の午前11時30分過ぎの段階で株価が8%下落し、189.7ドルまで値を下げました。その要因の一つとして、2025年の設備投資額が750億ドルと予想され、これは前年(2024年)比で43%増となる点が挙げられます。この金額は、市場のコンセンサス予想である570億ドルを大きく上回りました。
アルファベットの設備投資の大半は、サーバー、データセンター、ネットワーク機器を含むAIインフラへの支出に充てられる見込みです。
AI投資競争の過熱
アルファベットだけでなく、他の大手テクノロジー企業もAI分野への巨額投資を継続しています。
- マイクロソフト(MSFT)は2025年度に800億ドルの設備投資を計画
- メタ・プラットフォームズ(META)は2025年に最大650億ドルを投じる予定
投資家の一部は、中国のディープシークが低コストで高性能なAIモデルを開発したことを考慮し、AI開発への支出競争が長期的に持続するかどうかに疑問を抱いています。
なぜアルファベットのAI投資に懸念があるのか?
J.P.モルガンのアナリストであるダグ・アンマス氏は、アルファベットのAI投資に対する懸念点として、以下の2点を挙げています。
- メタの広告事業に比べ、アルファベットのAI投資による増収効果が不透明
- 検索事業の成長持続性に対する懸念がある
一方で、アルファベットはクラウドコンピューティングサービスの成長を強調しており、AIインフラの拡大がクラウド事業の拡大を支えると主張しています。
アルファベットの成長戦略と市場の評価
アルファベットの戦略は、AI分野における競争力を高めるための先行投資であり、特にクラウドコンピューティング事業の拡大が鍵を握ります。AIを活用した検索結果の提供や、ジェミニAIモデルへの広告挿入といった新たな売上源の開発も進めています。
アンマス氏は、アルファベットの投資が売上向上に結びつくかがカギになると分析し、アルファベット株の格付けを「オーバーウエート(強気)」で維持しつつ、目標株価を220ドルに据え置きました。
しかし、UBSのアナリストであるスティーブン・ジュ氏は、検索事業におけるAIの影響が不透明であることを理由に、アルファベット株の目標株価を211ドルから209ドルに引き下げ、格付けは「中立」を維持しています。
今後の展望
アルファベットの今後の株価動向は、AIインフラ投資がクラウド事業や検索事業の売上向上につながるかどうかにかかっています。特に、クラウドコンピューティングの拡大が市場の期待に応えられるかが焦点となります。
現時点では、AI関連の投資が短期的には市場の不安要素となっていますが、長期的な成長の鍵を握る可能性もあるため、投資家は今後の決算や事業の進展を注視する必要があります。
*過去記事 アルファベット GOOGL