J.P.モルガンのアナリストであるゴクル・ハリハラン氏は、TSMC(TSM)の格付けを「オーバーウエート」に再評価しました。この判断の背景には、中国の人工知能(AI)新興企業であるディープシーク(DeepSeek)が最近発表したAIモデルに対する市場の関心の高まりがあります。
AI技術の進化が半導体業界に与える影響
ハリハラン氏は、AIモデルの進化が加速することで、AI向けのコンピューティング需要全体が拡大すると分析しています。同氏によると、ディープシークの最新モデル「R1」は、新たなスケーリングの手法(推論またはChain-of-Thought)を活用することで、今後12~18カ月間に急速な進化を促す可能性があります。
推論技術とは、AIモデルがより高度な解答を導き出すために、多くの計算を重ねることで、潜在的な答えを深く考察する仕組みです。この技術の発展により、AI処理能力の向上が期待されています。
TSMCの米国預託証券が上昇
こうした期待の高まりを受け、TSMCの米国預託証券(ADR)は2月4日の取引開始直後に2%上昇し、203.88ドルを記録しました。
12月末から1月にかけて発表されたディープシークの新モデルにより、AI推論のためのコンピューティング能力に関する議論が活発になっています。しかし、ハリハラン氏は、この技術革新がAIの需要を抑制するのではなく、むしろデータセンターにおけるAIコンピューティング能力を向上させると考えています。
AI関連設備投資は引き続き拡大
ハリハラン氏は、「フロンティアモデルを開発する企業がAI分野への設備投資を抑制するとは考えていない」と述べています。むしろ、AI技術の進歩に伴い、さらなる投資が進むと予想されています。
この見解を裏付けるように、TSMCは先月、AIチップの需要拡大により、2024年12月期の四半期売上が57%増加したことを発表しました。同社はエヌビディア(NVDA)のAIチップの主要製造パートナーであり、さらに、アップル(AAPL)のiPhone、クアルコム(QCOM)のモバイル・チップセット、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の半導体も製造しています。
TSMC、2025年のAI関連売上が倍増見込み
TSMCの会長兼最高経営責任者(CEO)である魏哲家氏は、決算発表後の電話会議において「AI関連の需要は引き続き堅調だ」と述べました。また、AI関連チップの売上は2025年に倍増すると予測しており、「急速に高まる需要」がその要因であると説明しました。
このように、AI技術の進化とそれに伴う半導体需要の拡大は、TSMCにとって今後の成長を支える大きな要素となるでしょう。引き続き、半導体業界の動向に注目が集まります。
*過去記事はこちら TSMC