米国の製造業は長い景気後退を脱しましたが、新たな問題として貿易戦争の影響が懸念されています。米国の著名な投資情報メディア「バロンズ(Barron’s)」が、2025年1月の米国製造業の状況と新たに課される関税の影響について詳しく報じています。本記事では、その内容を紹介しながら、投資家が注目すべきポイントについて解説します。
米国製造業、景気後退からの回復
バロンズの記事によると、米国供給管理協会(ISM)が発表した2025年1月の購買担当者景気指数(PMI)は50.9を記録し、前月の49.3から上昇しました。PMIが50を超えると、製造業が成長していることを示すため、9か月連続の縮小から抜け出したことになります。
新たな懸念材料:関税の影響
しかし、米国製造業には新たな問題が発生しています。それは、関税の影響によるコスト上昇と利益率の圧迫です。バロンズの記事によると、トランプ元大統領は1月末にカナダとメキシコからの輸入品に対して25%、中国からの輸入品に対して10%の関税を課すことを発表しました。ただし、カナダとメキシコへの関税は1ヶ月延期されています。
この新たな関税措置により、米国の製造業のコストが上昇し、利益率が低下する可能性が高まっています。
関税が企業の利益率に与える影響
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の分析によると、10%の関税が適用されると、製造業の平均営業利益率は約1.2ポイント低下すると見込まれています。さらに、カナダやメキシコへの関税が25%であることを考慮すると、その影響はさらに大きくなると推測されます。
現在、ラッセル1000指数に含まれる製造業の企業の平均営業利益率は約15%とされており、1~2ポイントの低下は7%~13%の利益減少に相当します。つまり、関税の影響だけで2025年の利益予測が約10%減少する可能性があるとバロンズは指摘しています。
関税の影響が大きい企業(負け組)
バロンズによると、関税の影響を特に受ける可能性が高い企業として、以下の企業が挙げられています。
- アレジオン(ALLE)
- バーティブ(VRT)
- アトマス・フィルトレーション・テクノロジーズ(ATMU)
- キャリア・グローバル(CARR)
- GEベルノバ(GEV)
- ロックウェル・オートメーション(ROK)
これらの企業は、北米にある製造拠点の約25%がメキシコに位置しており、関税の影響を大きく受ける可能性があります。実際に、これらの企業の株価は市場全体の下落を上回る平均2.6%の下落を記録したと報じられています。
関税の影響が少ない企業(勝ち組)
一方で、関税の影響が比較的少ない企業もバロンズの記事で紹介されています。
- トレーン・テクノロジーズ(TT)
- アメテック(AME)
- ドーバー(DOV)
- エマソン・エレクトリック(EMR)
- ボンティエ(VNT)
- パーカー・ハネフィン(PH)
これらの企業は、北米の製造拠点のうちメキシコにある割合が10%未満とされているため、関税の影響を受けにくいと考えられています。関税発表後の株価の下落も平均0.9%にとどまっており、影響が限定的であることが分かります。
投資家が注目すべき銘柄
バロンズの記事では、関税リスクの低い企業のうち、アナリストからの評価が高い企業についても触れられています。S&P500の平均「買い」推奨率は約55%ですが、トレーン・テクノロジーズを除いた5社の平均は約70%と高水準です。
特に、以下の5社は関税リスクが低く、アナリストの評価も高いため、投資家にとって魅力的な選択肢となる可能性があります。
- アメテック
- ドーバー
- エマソン・エレクトリック
- ボンティエ
- パーカー・ハネフィン
これらの企業の株価収益率(PER)は平均21倍であり、ラッセル1000に含まれる製造業の平均PERである25倍より割安な水準にあると報じられています。
まとめ:関税の影響を考慮した投資戦略
関税の影響を受けやすい企業は、短期的に株価が下落する可能性が高いですが、一方で関税の調整が行われた場合にはリバウンドする可能性もあります。一方で、関税リスクが低く、アナリストの評価が高い企業は、比較的安定した投資先として注目されそうです。PERが市場平均より低い銘柄もあり、割安な水準で購入を検討する価値があるかもしれません。
関税の動向は今後も変動する可能性があるため、投資家は最新のニュースを注視しながら、慎重に投資判断を下すことが重要です。