ブルームバーグ通信は2月2日、ドナルド・トランプ米大統領が新たな関税措置を発表し、中国、カナダ、メキシコを対象に追加課税を行うと報じました。この政策は、Eコマース市場に大きな影響を及ぼし、特に800ドル未満の小包に対する関税免除措置(デミニマス・ルール)が廃止されることが決定されました。
本記事では、ブルームバーグの報道を基に、トランプ大統領の新関税の詳細や影響を受ける企業、米国市場への影響について詳しく紹介します。
トランプ大統領の新関税の概要
ブルームバーグの報道によると、トランプ大統領は以下の関税措置を導入しました。
- カナダ・メキシコに対して25%の関税
- 中国に対して10%の関税
- 800ドル未満の小包に適用されていたデミニマス免税措置の廃止
デミニマス免税措置とは、800ドル以下の輸入品に関税を課さず、スムーズに米国内に流通させる制度です。これにより、特に中国のEコマース企業は、関税を回避する手段としてこのルールを利用していました。しかし、今回の変更により、今後は800ドル未満の輸入品にも関税が課されることになります。
この変更が新たな関税措置のみに適用されるのか、それとも既存の関税にも広く適用されるのかは現時点では不明です。ホワイトハウスの報道官も、この点に関する詳細なコメントを避けています。
影響を受ける企業
ブルームバーグによると、今回の関税措置によって影響を受けるのは、特に中国のEコマース企業です。対象となる主な企業は以下のとおりです。
- アリババ(BABA)
- 京東(JD)
- 拼多多(PDD)が運営するTemu
- Shein
これらの企業は、800ドル未満の小包を直接米国の消費者に配送することで、関税を回避していました。しかし、デミニマス制度の廃止により、このビジネスモデルが大きく揺らぐことになります。
特に、Temuは激しい値引き戦略によって米国市場で急成長を遂げていました。調査会社eMarketerのデータによると、Temuの米国での売上は2025年に300億ドルに達すると予測されていました。しかし、今回の関税措置によってコストが上昇し、価格競争力が低下することが予想されます。
米国市場への影響
ブルームバーグの報道によると、このデミニマス制度の廃止は、米国の消費者や小売業者にも影響を与える可能性が高いとされています。
- 消費者の負担増
低価格の海外商品を購入していた米国の消費者は、関税の影響で価格が上昇する可能性が高まります。特に低所得層の消費者にとって、今回の関税措置は大きな負担となるかもしれません。 - 小売市場の競争環境の変化
アマゾン(AMZN)やウォルマート(WMT)などの米国小売業者にとっては、公平な競争環境が整うことになります。これまで中国のオンライン小売業者は、関税を回避することで競争優位性を持っていましたが、今後はその優位性が薄れる可能性があります。 - 米国の関税収入増
政権関係者の発言によると、今回の措置は「米国の関税収入の増加」を目的としています。ブルームバーグによれば、2024年にはデミニマス制度を活用した輸入貨物が14億個に達しており、これらに課税することで米国政府は大きな財政的利益を得ると考えられます。
Temuの対応策
ブルームバーグは、Temuがこの関税措置を察知し、すでに対策を講じていると報じています。
- 米国内の倉庫に大量在庫を事前に輸送
- 関税を支払って大都市近郊の倉庫に保管
- 配送時間の短縮により競争力を維持
しかし、こうした対策を講じたとしても、コストの増加は避けられないため、Temuのディスカウント戦略に大きな影響が出ると考えられます。
今後の見通し
ブルームバーグによると、トランプ大統領の新関税政策は2025年2月4日(米国時間の火曜日午前12時1分)に発効します。今回の措置は、フェンタニルなどの違法薬物や不法移民の流入を防ぐ目的もあるとされていますが、その影響はそれだけに留まりません。
特に、米中貿易関係においては、新たな緊張を生む可能性があります。今後、中国政府が対抗措置を取るのか、また米国の消費者や小売業者がどのように適応するのかが注目されます。
まとめ
ブルームバーグの報道によると、トランプ大統領の新関税措置は、中国、カナダ、メキシコに対して大きな影響を与えると考えられます。特に、デミニマス制度の廃止により、中国のEコマース企業は価格競争力を失い、米国の消費者にも影響が及ぶ可能性があります。
TemuやSheinなどの企業は、米国内の倉庫を活用することで影響を抑えようとしていますが、関税コストの上昇は避けられず、事業モデルの見直しが求められています。