ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2025年1月30日付の記事で、ソフトバンクグループ(9984)の孫正義氏が、オープンAIとスターゲートへの巨額投資を進めていることを報じました。
同記事では、孫氏がAI革命に再び大きな賭けをしようとしている背景や、過去の投資実績、資金調達の詳細、さらにはマイクロソフトや中国のAI企業との競争構造について詳しく分析されています。
本記事では、WSJの記事をもとに、その内容を詳しく紹介します。
AI革命を逃した孫氏の焦り
WSJの記事によると、孫正義氏は「私は何もできなかった」と過去のAI投資の失敗を振り返りながら、自身の将来に疑問を抱いていると語ったそうです。
孫氏はこれまでAIの重要性を強調し続けてきたものの、生成AIの初期段階においては十分な投資ができなかったと見られています。そのため、現在進行中のAIブームに乗り遅れまいと、大規模な投資を決断したと記事は指摘しています。
ソフトバンク、オープンAIに最大250億ドルの投資へ
WSJの報道によると、ソフトバンクはオープンAIに対して150億ドルから250億ドルの投資を検討しているとのことです。
この投資は、オープンAIが進めている最大400億ドル規模の資金調達ラウンドの一部であり、これにより同社の企業価値は最大3000億ドルに達する可能性があります。
さらに、ソフトバンクはオープンAIとともに、クラウドコンピューティングの新たなインフラ構築を目指すスターゲートにも180億ドルを投資する計画です。
WSJによると、この投資によってオープンAIは、これまでの主要パートナーであるマイクロソフトのクラウド環境に依存しなくても、独自のインフラを構築できる可能性があると分析しています。
AIインフラを巡る競争と新たなプレイヤー
WSJは、ソフトバンクの投資がAI業界全体の競争構造に与える影響についても言及しています。
これまでオープンAIの最大の支援者であったマイクロソフトですが、オープンAIが「クラウドコンピューティングの能力が十分ではない」と主張したことで、両者の関係が悪化していると報じられています。
また、中国のAI企業「ディープシーク」が登場したことで、AI業界に新たな競争が生まれており、オープンAIの戦略に対する市場の見方も変わりつつあるとのことです。
孫氏の今回の投資は、オープンAIを支援するだけでなく、AIインフラ競争においてソフトバンクが主導権を握る狙いもあると、WSJは分析しています。
ソフトバンクの財務基盤と資金調達の選択肢
WSJの記事では、孫氏がこれほど大規模な投資を実現できる理由として、ソフトバンクの強固な財務基盤についても触れています。
特に、2016年に320億ドルで買収したアーム・ホールディングス(ARM)が、2023年のナスダック再上場後に株価が3倍に上昇し、現在1400億ドル以上の価値を持つことが重要な要素となっています。
また、ソフトバンクは約300億ドルの現金を保有しているほか、Tモバイルやドイツテレコムの株式売却などによってさらに270億ドル以上の資金を確保できる可能性があると報じています。
これにより、ソフトバンクはオープンAIとスターゲートへの投資資金を十分に確保できるとWSJは分析しています。
孫正義氏とアルトマン氏の「ブロマンス」
WSJはまた、孫氏とオープンAIのサム・アルトマン氏の関係についても言及しています。
2017年、アルトマン氏がYコンビネーターの代表だった頃に孫氏と投資交渉を行いましたが、孫氏の投資額があまりにも大きすぎたため、当時は交渉が決裂したと報じられています。
しかし、2024年に入り、孫氏は再びアルトマン氏のビジョンに共感するようになり、オープンAIの66億ドルの資金調達ラウンドに5億ドルを投資しました。さらに、従業員から株式を買い取るために15億ドルの公開買い付けを実施したことも明らかになっています。
WSJは、ソフトバンクとオープンAIの関係が今後さらに深まる可能性があると指摘しています。
スターゲート計画とデータセンター事業への進出
WSJの記事では、孫氏がAI分野での成功を確実なものとするために、AIインフラ事業へ進出しようとしていることにも注目しています。
2024年11月にドナルド・トランプ氏が大統領選で再選された後、孫氏とアルトマン氏は、スターゲートの計画を本格化させました。
WSJによると、スターゲートは今後4年間で最大5000億ドルを投資する計画であり、そのうちソフトバンクとオープンAIはそれぞれ180億ドルを拠出するとされています。
また、オラクルやアラブ首長国連邦のファンドMGXも資金提供を行う予定であり、テキサス州にAI専用の大規模データセンターを建設する計画が進められていると報じられています。
まとめ
WSJの記事では、孫正義氏がAI革命の波に乗り遅れまいとし、オープンAIとスターゲートに巨額投資を行う決断をした背景が詳しく説明されています。
アームの成功による強固な財務基盤を活かし、AIインフラの構築にも進出しようとする孫氏の動きは、今後のAI業界に大きな影響を与える可能性が高いとWSJは分析しています。
ソフトバンクのAI投資がどのような成果を生むのか、今後の動向に注目が集まります。