1月30日、米国株式市場が上昇する中、エヌビディア(NVDA)はその流れに完全には乗れませんでした。AIチップの大手企業として知られるエヌビディアですが、今後は市場の変動に乗り切れない状態が続くかもしれません。
エヌビディアの株価推移とテクニカル分析
エヌビディアの株価は30日に0.77%上昇し、終値は124.65ドルでした。しかし、1日の大半ではマイナス圏で推移し、一時は重要なテクニカル指標を下回る場面もありました。このような動きは、今後さらなる下落の可能性があることを示唆しています。
今年に入ってから株価は約7%下落しており、30日の早い時間には118ドルまで下落しました。さらに、200日移動平均線である122ドルを割り込む場面も見られました。この200日移動平均は、過去200営業日の終値の平均値を基に算出され、テクニカル分析では重要な支持線や抵抗線として考えられます。一般的に、株価がこの水準を下回ると、さらなる下落を招く可能性があると考えられています。
エヌビディアの株価下落要因とAI競争
エヌビディアの株価が下落した背景には、中国製の安価な人工知能技術との競争激化に対する懸念があります。特に今週、新たなAIチャットボットアプリ「ディープシーク」がリリースされたことで、市場のセンチメントが悪化しました。これを受けて、空売り投資家がエヌビディアの株式を買い占める動きが見られ、27日には株価が一時17%下落する事態となりました。
しかし、この下落がテクノロジーセクター全体に影響を及ぼしたかというと、そうではありませんでした。
半導体セクターと「マグニフィセント・セブン」の動向
エヌビディアが含まれるPHLX半導体指数(SOX)は30日に2%以上上昇し、週初の暴落以降は安定した動きを見せています。さらに、ブロードコム(AVGO)、アーム・ホールディングス(ARM)、マーベル・テクノロジー(MRVL)、TSMC(TSM)などの大手半導体企業も30日には上昇し、いずれも200日移動平均を上回る水準で取引されています。
また、ラウンドヒル・マグニフィセント・セブン上場投資信託も200日移動平均を約20%上回っており、ディープシークの登場がアップル、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドットコム、アルファベット、テスラといったハイテク大手に対して大きな影響を与えていないことを示しています。
エヌビディアの株価は一時的な調整か?
このような市場の動きを考慮すると、エヌビディアの株価下落はテクノロジー業界全体の低迷を示唆するものではない可能性があります。むしろ、2024年に2倍以上に値上がりしたエヌビディアの株価が、一時的に調整局面を迎えているだけなのかもしれません。
ウォール街では、「ジェボンズのパラドックス」についても議論が広がっています。これは、何かの価格が下がると需要が高まるという考え方です。しかし、今回のエヌビディアの株価の動きを最もよく表しているのは、アイザック・ニュートンの「重力の法則」に関する有名な言葉かもしれません。それは、「上がったものは、いずれ下がる」というものです。
今後の展望と投資戦略
エヌビディアの株価が200日移動平均を下回ったことは短期的なリスクを示唆していますが、半導体セクター全体の成長トレンドは依然として強い状態にあります。そのため、長期投資の視点では、今回の株価調整を押し目買いの好機と捉えることもできるかもしれません。
ただし、中国製AI技術との競争が激化する中、エヌビディアがどのように競争優位性を維持するのかが、今後の株価に大きな影響を与えそうです。投資家としては、同社の技術革新や市場動向を注視しながら、慎重に判断することが重要です。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA