オランダの半導体製造装置メーカーであるASMLホールディング(ASML)の株価が大幅に上昇しました。1月29日、同社の第4四半期の受注額が市場予想を大きく上回ったことを受けて、アムステルダム市場で10.78%の上昇を記録しました。人工知能(AI)市場の成長が続く中、半導体メーカー各社が高度な半導体を製造するための装置を確保しようとしており、それがASMLの業績を押し上げる要因となっています。
第4四半期の受注額は市場予想を大きく上回る
ASMLの2024年第4四半期の受注額は70億9,000万ユーロ(約74億ドル)となり、前年同期の91億9,000万ユーロからは減少したものの、アナリスト予想の39億9,000万ユーロを大幅に上回りました。特に、30億ユーロの受注は、チップ上に最も複雑な層を印刷するための最先端技術である極端紫外線(EUV)リソグラフィ装置に関するものです。
ASMLの装置に対する需要は、半導体メーカーの投資計画によって変動しますが、今回の受注増加は、チップメーカーがAI市場の成長を見据えて積極的な投資を行っていることを示しています。
AI市場の成長と半導体業界への影響
AIの進化に伴い、データセンターの需要が拡大しており、これを支える高性能半導体の必要性が増しています。ASMLのクリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)は、「AIの成長は半導体業界の成長をけん引する重要な要因であり、これは市場の力学を変える」と述べています。
一方で、AIチップ以外の分野では需要の不安定さが続いています。自動車、スマートフォン、ラップトップなどに使用されるレガシー半導体への需要は、ここ数カ月間変動しており、自動車メーカーや家電メーカーは、数年前に蓄えた半導体の在庫を消化しつつあるため、新規の発注を抑える動きが見られます。
ASMLの業績と今後の見通し
ASMLの2024年第4四半期の売上は92億6,000万ユーロで、前年の72億4,000万ユーロから増加し、アナリスト予想および同社のガイダンスを上回りました。純利益は26億9,000万ユーロで、前年の20億5,000万ユーロから増加しており、こちらも市場予想を上回る結果となりました。
また、2024年の普通株式1株当たりの配当総額を前年比4.9%増の6.40ユーロとすることを発表しました。売上総利益は47億9,000万ユーロ、利益率は51.7%となり、コンセンサス予想とガイダンスを超える水準となりました。
2025年第1四半期については、売上を75億~80億ユーロ、粗利益率を52%~53%と見込んでいます。
AI市場の拡大が半導体業界の長期成長を支える
ASMLは、2025年の売上予想を300億~350億ユーロとし、以前の最大400億ユーロの予想から引き下げました。これは、AI以外の半導体市場の回復が予想以上に時間を要しているためです。しかし、長期的な成長見通しについては依然として強気な姿勢を維持しています。
同社は、AIが半導体業界に与える影響は大きく、2035年までに世界の半導体売上を1兆ドル以上に押し上げる可能性があるとしています。特に、エヌビディア(NVDA)や台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)などの大手企業がAI向けのチップ製造を加速させる中で、ASMLの高度なリソグラフィ装置への需要は引き続き高水準を維持すると考えられます。
まとめ
ASMLの2024年第4四半期の業績は、予想を上回る受注と売上の増加によって市場の期待を超えました。AI市場の拡大が同社の成長を後押しする一方で、AI以外の半導体市場の回復には時間を要する見込みです。ただし、長期的な視点では、半導体市場全体が引き続き成長する可能性が高く、ASMLの技術と市場ポジションは今後も有利な状況が続くと考えられます。