フォレンジック・ファイナンシャル・リサーチを専門とする空売り調査会社であるヒンデンブルグ・リサーチ(Hindenburg Research)は1月15日、活動停止を発表しました。同社の創業者であるネイト・アンダーソン氏は、自身のウェブサイトに投稿したメモの中で、「ヒンデンブルグは私の人生の一章であり、今では私を定義する中心的なものではありません」と述べています。
ヒンデンブルグ・リサーチは、不正会計や「悪徳業者」の摘発、非倫理的なビジネス手法、未公開の規制や製品、財務上の問題を発見することに重点を置いていました。同社がこれまでに発表したレポートは、多くの注目を集めてきました。
最近の調査対象となった企業
ヒンデンブルグ・リサーチによるレポートについてはこのブログでも過去に何度かご紹介しました。最近では、以下の企業に対するものがあります。
- カルバナ(CVNA):オンライン中古車販売プラットフォーム。
- ロブロックス(RBLX):オンラインゲームプラットフォーム。
- スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI):人工知能サーバーを製造する企業。
これらの企業に関するレポートが公表される前に、ヒンデンブルグはこれらの株を空売りしていました。
空売りの仕組みと賛否
空売りとは、株価が下落することを予測して利益を得る投資手法です。トレーダーは株を借りて売却し、その後、価格が下がったタイミングで買い戻して差額を利益として得ます。ただし、株価が下落しなかった場合、損失を被るリスクもあります。
この手法は賛否両論を呼びます。空売りの対象となった企業の経営陣からの反発が多く、特に空売りの意見が公の場で共有されると、さらに批判が強まる傾向にあります。
アイカーン・エンタープライズとの対立
2023年、ヒンデンブルグ・リサーチはアイカーン・エンタープライズ(IEP)を「ネズミ講のような経済構造」と非難するレポートを発表しました。これに対し、アクティビスト投資家であるカール・アイカーン氏は強く反発しました。
この報告書の影響で、同社の株主がヒンデンブルグを訴える事態にも発展しましたが、この訴訟は2023年9月に棄却されました。アイカーン・エンタープライズ側は、この訴えに対して「根拠がない」とコメントしています。
今後の展望
アンダーソン氏は、15日に投稿したメモの中で、今後6カ月以内に「当社のモデルのすべての側面と調査手法をオープンソース化する」意向を表明しました。この動きは、投資業界全体に対して透明性を高める試みとして注目されています。
ヒンデンブルグ・リサーチがこれまでに果たしてきた役割は大きなものであり、今後もその影響が残り続ける可能性があります。同時に、アンダーソン氏のオープンソース化の取り組みが、投資の世界にどのような影響を与えるかが注目されています。