TSMC(TSM)が16日発表した2024年10〜12月期決算は、純利益が前年同期比57%増の3747億台湾ドル(約114億ドル)となり、市場予想を上回る好調な業績を記録しました。この結果は、同社が先週公表した予想を上回る売上高に続くものです。市場の平均予想3698億台湾ドルを超える結果となり、投資家の注目を集めました。
好調な業績が続くTSMC、AI需要の追い風
TSMCは2019年以降、1四半期を除いて市場予想を上回る業績を記録し続けており、その成長の勢いは衰えを見せていません。当初はアップル(AAPL)のiPhoneやiPadが主要な売上ドライバーとなっていましたが、現在ではエヌビディア(NVDA)のAI関連需要がさらに成長を後押ししています。エヌビディアの市場評価額が3兆ドル以上に達した背景には、AIへの積極的な投資があり、TSMCはその主要なチップ供給企業としてその恩恵を享受しています。
TSMCは、AI開発競争の中で世界的な受益者となっており、2024年の株価は80%以上の上昇を記録しました。この伸び率は1999年以来最大の増加となっています。
AI投資の拡大と米中の地政学的リスク
AIインフラの急速な構築が続く中で、AIアプリケーションの収益性に対する懸念も浮上しています。一部では、バブルの可能性を指摘する声もありますが、TSMCの成長は引き続き注目されています。一方で、同社は米中間の技術対立がもたらす不確実性にも直面しています。
2024年10月、アメリカ政府は中国へのAIチップ輸出を抑制する新たな規制を導入しましたが、TSMCは既存の中国向け受注の半分以上を維持する可能性があると見られています。同社の売上の12.6%は中国市場からのものであり、中国向けスマートフォンSoCや中間層のコンピューティングチップの販売が支えとなっています。
世界展開を加速させるTSMC
TSMCは地政学的なリスクへの対応として、グローバルな生産拠点の拡大に注力しています。同社はアメリカのアリゾナ州や日本での新工場の進捗に投資家の関心が集まっており、これらの計画が予定通り進むかどうかが注目されています。
さらに、TSMCはヨーロッパでの生産拡大にも取り組んでいます。現在建設中のドイツ・ドレスデン工場に加え、AIチップ市場の需要を取り込むため、ヨーロッパにさらに新たな工場を建設する計画を進めています。
今後の見通し:AI需要と新たな成長分野への期待
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、チャールズ・シャム氏は、2025年におけるTSMCの売上成長の主要因として以下の要素を挙げています。
- AIチップの堅調な需要
- 新型スマートフォンチップやAI対応PCの市場成長
- インテル(IINTC)からのアウトソーシング受注増
- 次世代通信規格WiFi 7対応チップの普及
モルガン・スタンレーの予測によれば、TSMCの2025年の売上はドル建てで20%台前半の成長が見込まれており、投資家にとって魅力的な成長シナリオが描かれています。
まとめ
TSMCの2024年12月期決算は、予想を上回る好調な業績を示し、AI市場の需要拡大や世界的な競争が同社にとって追い風となっています。地政学的なリスクを抱えながらも、アメリカ、日本、ヨーロッパでのグローバルな生産拠点の拡大が成長を支える要因として期待されています。エヌビディアやアップルといった主要顧客との関係を維持しつつ、TSMCは半導体業界におけるリーダーシップをさらに強化していくと見られています。
*過去記事 TSMC