ネットフリックス(NFLX)の株価は、評価の危険ゾーンに入りつつあるとの懸念がある中で、キーバンクのアナリストは楽観的な立場を維持し、目標株価を引き上げました。
12月24日の米国市場で、ネットフリックスの株価は2.27%上昇し932.12ドルとなりました。これに対し、キーバンクのアナリストであるジャスティン・パターソン氏は、オーバーウェイトの評価を維持しつつ、目標株価を785ドルから1000ドルに引き上げました。この新たな目標株価は、現在の水準から7%高い水準となります。
評価に関する警告と成長見通し
ただし、この目標株価の引き上げには、2つの警告が伴っています。1つ目は、ネットフリックスがケーブルテレビとストリーミングTVの戦争における勝者とみなされているという物語、2つ目は株価の評価です。アナリストは、ネットフリックスの株価が売上に対する企業価値(EV)比率で9倍に達していると指摘しており、これは歴史的に見るとピーク評価に近いことを意味しています。
「現在、我々は市場のコンセンサスが『ネットフリックスが勝者』であり、『従来のメディアが厳しい状況』という状況にあると見ています。この評価と物語の組み合わせは、投資家にとってリスクを高める傾向があります」とアナリストは述べています。
それでも、キーバンクは目標株価を引き上げ、評価を維持しました。「最近の勢いがすでに価格に織り込まれている可能性があるものの、NFLXは2025年に向けてS&P 500をアウトパフォームできると考える理由がいくつかあります」とアナリストは述べています。
ネットフリックスのビジネスモデルの転換
ネットフリックスのビジネスには転換の兆しがあります。同社は2024年4月に発表した株主向け書簡で、四半期ごとの有料会員数や1人当たり平均売上を報告しない方針を示しました。キーバンクはこれを、四半期ごとの純増数から総売上の成長に焦点を移す動きと捉えています。
この転換は、2023年に始まったパスワード共有の取り締まりから始まりました。この取り組みは、視聴者数の減少を一時的に引き起こしましたが、同社は主に有料共有モデルを展開し、アカウント所有者が世帯外の追加メンバーに対して追加料金を支払う仕組みを導入しました。キーバンクは、これらの指標が2025年には改善すると予測しています。
ライブイベントへの注力と成長の可能性
視聴者数が増加するにつれ、収益化の機会も拡大するとアナリストは述べています。ネットフリックスは「これまでで最も強力なコンテンツスレート」を準備しており、NFLや「イカゲーム2」の放映に続き、多くの主要なオリジナル作品が復活します。
さらに、同業他社のPeacock、ディズニー(DIS)、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)、パラマウント(PARA)と比較しても、ライブストリーミングがネットフリックスに移行していると指摘されています。ネットフリックスは直接消費者向け動画売上の50%を占めており、業界の収益性のほぼすべてを担っている状況だとキーバンクのアナリストは述べています。
ライブ番組の取り組み
ネットフリックスは現在、映画やドラマの制作だけでなく、ライブ番組にも進出しています。2024年には、コメディスペシャル「トム・ブレイディのロースト」やジェイク・ポール対マイク・タイソンのボクシング試合などが注目を集めました。後者の試合は、リアルタイムで6000万世帯の関心を引き付けました。
この試合はバッファリングや遅延問題に直面しましたが、大きな視聴者の関心を集め、ネットフリックスがメディア業界に新たな影響を与える意欲を示しました。
広告ビジネスと価格引き上げの可能性
広告事業に関しては、売上が本格化するのは2026年以降と見込まれていますが、これが将来の成長率加速につながる可能性があります。また、キーバンクによれば、ネットフリックスは市場やプランタイプにおいて価格を大幅に引き上げたことがなく、最後の主要な値上げは2022年1月に行われたのみです。今後のライブイベントの増加に伴い、値上げの可能性は高まると考えられています。
まとめ
市場の評価が高いことや物語が楽観的すぎるという指摘もある中で、キーバンクはリスクよりも上振れの可能性に賭ける判断をしました。2025年に向けた成長と収益化の転換がどのように展開していくかが注目されるポイントです。
*過去記事はこちら ネットフリックス NFLX