エヌビディア(NVDA)の株価は、12月18日の米国市場朝の取引で4%以上上昇しました。この動きは、ウォール街のアナリストが同社株への買い推奨を繰り返したことが影響しています。一方で、競争の激化やAIチップ需要の減退が懸念されており、市場には慎重な見方も広がっています。
16日には、エヌビディアの株価が11月の過去最高値である148.88ドルから12%下落して取引を終えていましたが、その後の反発が注目されています。
ウォール街アナリストの強気見通しと目標株価の引き上げ
バーンスタイン、TDカウエン、モルガン・スタンレー、トゥルイストのアナリストたちは、ここ数日、エヌビディアの成長力に対して強気の見通しを示しています。特にトゥルイスト証券のウィリアム・スタイン氏は、エヌビディアのテクノロジースタックの優位性に注目し、目標株価を169ドルから204ドルに引き上げました。
同氏は、「業界関係者の間では、エヌビディアの技術的な優位性と競争力が広く認識されている」とコメントしており、この評価が株価の押し上げに寄与していると考えられます。
カスタムチップの台頭とエヌビディアの課題
一方で、エヌビディアのGPUがAIチップ市場でのシェアを失う可能性が懸念されています。顧客が独自のカスタムチップを開発しているため、競争が激化している状況です。具体的には、アルファベット(GOOGL)やメタ・プラットフォームズ(META)がブロードコム(AVGO)と共同でチップを開発しており、マイクロソフト(MSFT)、テスラ(TSLA)、アマゾン(AMZN)も独自のチップ開発を進めています。
さらに、ブロードコムは、ChatGPTを開発したOpenAIや米アップル(AAPL)向けに新たなチップを開発中とされており、これが市場全体に新たな競争構造をもたらしています。このような動きにより、エヌビディアの株価は最近下落基調を見せていました。
これらのカスタムチップは、ASIC(特定用途向け集積回路)と呼ばれるもので、特定のAIニーズに対応するために最適化されており、GPUよりも安価である場合が多いとされています。
AIチップ市場におけるエヌビディアの競争優位
モルガン・スタンレーによると、AIチップ市場全体に占めるカスタムチップの割合は、2024年の11%から2030年には15%に拡大する可能性があります。しかし、同レポートでは、エヌビディアの競争力の維持について楽観的な見方が示されています。「ASICが進化を続けているとはいえ、エヌビディアの実行力は競合他社にとって依然として大きな壁となっている」と指摘しています。
また、大手テクノロジー企業によるAIチップへの投資ペースが緩やかになる可能性があることも懸念されています。特に、マイクロソフトやアルファベットが直近の決算報告書で示唆したように、AI関連支出の伸びが鈍化する可能性があることが指摘されています。
エヌビディアの今後の展望と新製品への期待
TDカウエンのアナリスト、ジョシュア・ブッチャルター氏は、エヌビディアが業界の懸念を認識している一方で、引き続き革新に自信を持っているとコメントしています。同社は、2025年に単独で販売するCPUを発表する可能性があると見られており、これは現在販売中のGPU「Hopper」および「Blackwell」とは異なる新たなコンピューター技術の展開となる見込みです。
現在、エヌビディアはサーバー向けにGPUとArmベースのGrace CPUを組み合わせて提供していますが、CPU単体の販売は行っていません。この新製品が市場にどのような影響を与えるのか、投資家や業界関係者の間で注目が高まっています。
まとめ
エヌビディアは、競争環境の激化やAI需要の減速といった課題に直面しているものの、ウォール街のアナリストは引き続き強気の見通しを維持しています。同社の革新力や市場での競争優位性が、これらの課題を乗り越える原動力となることが期待されています。また、新たなCPUの発表など、今後の成長を見据えた取り組みにも注目が集まっています。
投資家にとっては、エヌビディアがどのように競争環境に適応し、AIチップ市場でのリーダーシップを維持していくのかを見極める重要な局面といえます。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA