サンフランシスコに本社を置くソフトウェア企業データブリックスは、プライベート市場で100億ドルの資金調達を目標とし、そのうち86億ドルを確保したと発表しました。このニュースは、一部の大手企業が公開市場(IPO)に頼らずとも巨額の資金を集めることができる事例の最新例です。
オープンAIやスペースXのような注目企業のIPOが期待される中、現実には、多くの企業が非上場のまま成長を続けることが可能です。データブリックスもこの道を歩んでおり、今回の資金調達後の企業評価額は620億ドルに達しました。主導したのはスライブ・キャピタルで、インサイト・パートナーズ、DSTグローバル、アンドリーセン・ホロウィッツ、WCMインベストメント・マネジメントなど、シリコンバレーを代表する著名投資家が支援しています。
機関投資家としては、オンタリオ州教職員年金基金、ウェリントン・マネジメント、アイコニック・グロース、サンズ・キャピタル、MGXなどが今回の資金調達に参加しました。
データブリックスが語る魅力的な成長ストーリー
データブリックスの成長は、人工知能(AI)分野への米国企業全体の投資増加を背景に、目覚ましい勢いを見せています。年間売上の前年比成長率は60%に達し、第3四半期の売上は60%増加しました。さらに、同社は年末に30億ドルの年間売上と、四半期ベースで初のキャッシュフローの黒字化を達成する見通しを示しています。ただし、純利益の達成時期については明らかにしていません。
データブリックスの主力製品とそのインパクト
データブリックスが提供する主力製品データブリックス・データ・インテリジェンス・プラットフォームは、企業がデータへのアクセスを「民主化」し、機械学習、分析、その他のAI活用を容易にするソリューションです。同社は次のように述べています。
「当社のデータインテリジェンス・プラットフォームは、疾病やがんの早期発見、新たな気候変動対策の模索、金融詐欺の検出、医薬品の迅速な開発、精神健康への迅速な介入、地域金融格差の縮小など、多岐にわたる分野で利用されています。」
このような実用的かつ社会的インパクトのある技術が、企業の成長を後押ししています。
将来的な出口戦略とIPOの可能性
今回の資金調達に参加したプライベート市場の投資家は、将来的にリターンを求めています。その出口戦略として考えられるのが、エヌビディア(NVDA)、マイクロソフト(MSFT)、オラクル(ORCL)のような大手企業への売却、またはIPOの実施です。しかし、評価額が620億ドルという規模に達していることから、買収に名乗りを上げられる企業は限られています。
このため、長期的にはデータブリックスがIPOに踏み切る可能性も否定できませんが、現時点ではそのタイミングは未定です。
サービスタイタンの成功例がIPO市場に追い風
一方、最近のIPO市場では、サービスタイタン(TTAN)の成功例が注目されています。同社は先週、株価71ドルで新規上場を果たし、12月17日にはさらに4.5%上昇し、110ドルに達しました。こうした事例が続けば、データブリックスのような大手非上場企業がIPOを検討する環境が整う可能性があります。
今後もプライベート市場とIPO市場の動向には、投資家の関心が集まり続ける見込みです。データブリックスの次なる一手がどのような形になるのか、引き続き注視する必要があります。