アマゾン・ドット・コム(AMZN)が展開するクラウドサービス部門、Amazon Web Services(AWS)が、その大規模なデータセンターの効率性、可用性、デザインを大幅に改善することを発表しました。このアップデートにより、AIアプリケーションの需要が高まる中、顧客により強力な処理能力を提供することを目指しています。
AWSデータセンターの進化と効率化
AWSのインフラストラクチャサービス担当副社長、プラサド・カリヤナラマン氏は、今回の改善について次のように語っています。
「電気や機械設計を大幅に簡素化し、顧客にとってより高い可用性を実現しました。また、生成AI向けのラックやチップに必要な膨大な電力供給についても革新を進めています」
AWSのデータセンターはすでに業界トップクラスの可用性を誇りますが、今回の変更により、99%以上のインフラストラクチャ可用性がさらに強化されるとしています。ハードウェアの設計を最適化し、システムの中断を最小限に抑えることで、顧客が安心してサービスを利用できる環境を提供します。
液冷システムの導入で次世代チップに対応
今回のアップデートでは、エヌビディア(NVDA)の次世代BlackwellチップやAWS独自のTrainium 2チップに対応するために、液冷システムを新たに導入しています。
液冷システムは、自動車のラジエーターに似た仕組みを持ち、冷却液がチップの熱を効率よく除去します。従来の空冷式では処理しきれない膨大な熱を抑えることで、次世代AIサーバーの稼働を可能にします。
AWSの革新による具体的な効果
AWSはすでに10万以上の顧客が生成AIアプリケーションを実行しており、これらはトレーニング、推論、ファインチューニングなど幅広いプロセスに及びます。AWSのサービスであるSageMakerやBedrockがその代表例です。
プラサド氏は次のように述べています。
「これらの革新により、顧客はより多くのコンピュート処理をAWS上で実行でき、私たちはそれを効率的かつ高い可用性で提供することが可能になります」
さらに、電力効率の向上にも成功しており、今回の改良により、データセンター全体の機械効率が46%向上。同じ電力量でより多くの計算処理が可能になります。
次世代AI時代に向けたAWSの取り組み
生成AIの普及に伴い、クラウドプロバイダー各社はさらなるデータセンターの強化を進めています。アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)は、それぞれ効率性向上や新たなエネルギー源の模索に取り組んでおり、なかには原子力エネルギーの活用を検討する企業もあります。
AWSの取り組みは、次世代クラウドインフラ構築の一環に過ぎませんが、その影響力は非常に大きいといえます。生成AIアプリケーションの拡大が続く中、AWSの新たな技術革新に今後も注目が集まります。
AWSの高い収益性がアマゾン全体の成長を支えており、今回のデータセンター改良が長期的な株価上昇につながる可能性も期待されています。
*過去記事はこちら アマゾン AMZN