アマゾン(AMZN)は11月14日、ヘルスケア業界に対する新たな挑戦を発表しました。同社は脱毛治療や勃起不全治療などに用いられる低価格のジェネリック医薬品を販売開始し、業界に衝撃を与えています。この新サービスは、遠隔医療業界の競合企業にすでに大きな影響を及ぼしています。
アマゾンの新たなサービスがもたらす影響
アマゾンは、ヒムズ・アンド・ハーズ・ヘルス(HIMS)やローなどの遠隔医療企業と競合する価格設定を発表しました。たとえば、アマゾンは薄毛治療薬フィナステリドを月額16ドルで提供しており、これはHIMSの22ドルやローの20ドルよりも低価格です。
このニュースを受けて、HIMSの株価は14日の米国市場で20%を超える急落を見せています。アマゾンの低価格設定とプライム会員向けの利便性が、市場の注目を集めています。
アマゾンのヘルスケア戦略
アマゾンの新サービスは、2023年に買収したプライマリケアチェーン「アマゾン・ワンメディカル」を基盤としています。今年初めにはワンメディカルを通じて訪問ごとの支払い方式の遠隔医療サービスを開始しました。今回のプログラムでは、ジェネリック医薬品の処方箋をワンメディカルで取得し、2020年に立ち上げた宅配処方サービス「アマゾン・ファーマシー」を利用して薬を購入できます。この連携により、ユーザーは診察から処方、薬の受け取りまでワンストップで完結できるため、手間を大幅に減らし、利便性が向上しています。特に忙しい生活を送る人々にとって、自宅で簡単に薬を受け取れる点が大きなメリットです。
さらに、アマゾンは勃起不全治療薬を月額19ドル、アンチエイジング用スキンクリームを月額10ドルで提供し、遠隔医療診察は29ドルで受けられる仕組みを整えています。
遠隔医療業界に与える打撃
HIMSやローのような遠隔医療企業は、低価格のジェネリック医薬品の提供で市場をリードしてきましたが、アマゾンの参入により市場競争はさらに激化しています。リーリンク・パートナーズのアナリストのマイケル・チェルニー氏は、「アマゾンの参入は市場における深刻な競争相手となる」と述べています。
一部の遠隔医療企業は、ノボ ノルディスクのGLP-1薬「Wegovy」の模倣品を展開するなど差別化を図っていますが、アマゾンはこの分野には進出していません。
ヘルスケア業界におけるアマゾンの影響力
アマゾンはこれまでにもヘルスケア分野での動きを見せてきました。2018年にはオンライン薬局「PillPack」を買収し、薬局株が急落する事態を引き起こしました。また、在宅医療サービス企業「Signify Health」の買収に関する報道でも、業界に大きな影響を与えました。
今回は、資金力や規模でアマゾンと大きく差がある比較的小規模な競合企業をターゲットにしていると見られています。これにより、一部の企業は価格競争やサービス提供能力でアマゾンに対抗できず、この競争を生き残れない可能性が高いと考えられています。
まとめ
アマゾンのヘルスケア業界への参入は、既存企業に大きな衝撃を与え続けています。低価格ジェネリック医薬品の提供も例外ではなく、遠隔医療企業がどのように対抗していくのかが注目されます。市場の競争が激化する中で、アマゾンの動向に注目する必要があります。
*過去記事はこちら アマゾン AMZN