2024年の米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したことを受け、テスラ(TSLA)の株価が11月6日の市場で15%高と急上昇しました。選挙勝利宣言の中で、トランプ氏はイーロン・マスク氏を特別に称賛し、同氏のビジョンと才能を「スーパー・ジーニアス」と評価しました。また、トランプ氏はテスラやスペースXの活躍が米国経済に大きく貢献していることを強調し、マスク氏が新政権においても重要な役割を担う可能性を示唆しました。
さらに、マスク氏はトランプ氏の選挙活動に多額の寄付を行っており、この投資が短期的に報われた形となっています。テスラの株価上昇により、マスク氏の個人資産も大幅に増加しています。
EV業界全体への影響:テスラにとっては追い風か?
トランプ氏の再選により、電気自動車(EV)業界への税制支援、特にEV購入時の連邦税額控除や充電インフラに対する補助金が減少する可能性があります。税額控除の削減や廃止が懸念されており、特に新興EVメーカーにとっては逆風となると考えられます。
しかし、テスラはこの税控除がなくても利益を上げられる規模に成長しており、競争の緩和によって、新興メーカーの参入障壁が高まり、既存の大手企業に有利な環境が整うため、市場シェアを拡大する可能性があります。ウェドブッシュ証券の著名なアナリスト、ダン・アイブス氏は、テスラの株価が今後も40~50ドル上昇する可能性があると予想しています。
一方、バイデン政権で導入されたEVへの優遇措置がトランプ政権下でも存続する可能性もあります。バイデン政権のEV政策は民主党支持の州と共和党支持の州の両方に恩恵を与えており、完全に廃止されることはないとの見方もあります。
規制緩和と法人税引き下げがテスラに有利に働く可能性
トランプ氏の再選により、規制緩和が進むことが予想されます。これはテスラが2025年に予定しているロボットタクシー事業の展開にとって追い風です。ロボットタクシー事業の本格展開には規制当局の承認が不可欠であり、規制が緩和されれば、スムーズな事業拡大が見込まれます。
さらに、トランプ政権は法人税率を21%から15%に引き下げる可能性があり、これがテスラにとっても大きな恩恵となります。法人税の引き下げにより、テスラは税負担が軽減され、その結果コスト削減が可能となり、最終的には利益増加に繋がると考えられます。法人税の引き下げは米国企業全体にメリットをもたらし、テスラの利益拡大に寄与すると考えられます。
他のEVメーカーにとっては厳しい局面
テスラが急騰した一方で、リヴィアン(RIVN)やルーシッド・グループ(LCID)の株価は大幅に下落しました。リヴィアンは6日の取引で約10%、ルーシッド・グループは約8%の下落を記録しています。これには、トランプ氏の再選により税制支援の削減が見込まれることや、資金面での不安が増大していることが背景にあります。
特に、これらの新興企業は依然として補助金に大きく依存しており、将来のキャッシュフローに対する懸念が強まっているため、投資家の売り圧力が高まったと考えられます。これは、テスラが税制支援が減少しても利益を上げられる体制を持っている一方で、他の新興EVメーカーは依然として補助金に依存していることが影響しています。
ゼネラルモーターズ(GM)とフォード(F)はEVの販売が伸び悩んでいるため、規制緩和や税率の低下が利益拡大の助けになると考えられ、株価はそれぞれ上昇しました。
今後のテスラ株の見通し:投資家が注目するポイント
テスラの株価は今年に入ってから約14%上昇しており、今後も成長が期待されています。特に、需要の増加、技術革新による生産効率の向上、そして新しい市場への積極的な進出がその成長を支える要因となっています。特に、テスラが2025年に計画している低価格モデルの発売や自動運転ロボットタクシー事業が注目されています。これにより、テスラはさらに多くの市場シェアを獲得する可能性があります。
一方で、マスク氏が複数の企業を同時に経営していることがリスク要因として挙げられます。具体的には、同氏の時間とリソースが分散されることで、テスラの戦略的意思決定や経営に十分な集中ができなくなるリスクがあります。また、複数のプロジェクト間での優先順位の競合が発生し、テスラの成長を阻害する可能性があるため、投資家はこの点に懸念を抱いています。新たなプロジェクトが増えると、テスラへの関与が薄れる可能性があるため、投資家はマスク氏の多忙さに対する懸念を抱いています。
まとめ
トランプ氏の再選がテスラにプラスの影響を与える可能性が高い一方で、業界全体にとっては不確実な要素も多く存在します。規制緩和や法人税の引き下げはテスラにとって追い風である一方、税制支援の減少が他のEVメーカーにとって逆風となる可能性があります。
今後もテスラの成長が期待される中で、投資家はイーロン・マスク氏の経営スタイルとトランプ政権の政策動向に注目する必要があります。
*過去記事はこちら テスラ TSLA