サーバーメーカーのスーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)は、AIサーバー市場で急成長を遂げている企業ですが、11月5日の市場終了後、アナリスト予測を下回る売上見通しを発表し、財務報告書の遅延と合わせて投資家の不安が高まっています。
今回の発表では、2024年12月に終了する四半期の売上が55億ドル〜61億ドルと予想されており、アナリスト予測の67億9,000万ドルを大きく下回りました。これには、半導体供給不足や一部の顧客需要の低迷が影響しており、特にAIサーバー関連製品の納期に遅れが生じていることが要因とされています。この発表を受け、株価は時間外取引で約16%下落し、今後の動向が注目されています。
財務報告の遅延と監査法人の退社
スーパーマイクロは8月に期限が過ぎた年次財務報告書の提出が遅延しており、監査法人であるアーンスト・アンド・ヤング(EY)もガバナンスと透明性への懸念から辞任しました。この監査法人の辞任により、投資家の間では同社の財務報告に対する信頼性が低下し、将来的なガバナンスに対する懸念が高まっています。これが株価の下落や投資家心理の悪化につながっており、信頼回復にはより一層の透明性とガバナンス強化が求められています。5日の発表によると、特別取締役委員会が調査を実施し、「不正や不祥事の証拠はない」としていますが、信頼回復には時間がかかる見通しです。
半導体供給不足とエヌビディアとの関係
同社の最高経営責任者(CEO)、チャールズ・リャン氏は、半導体供給不足が売上に影響を与えていると述べています。この供給不足は、特にAIサーバー向けに必要な高性能チップの需要が供給を上回っていることが原因であり、さらに一部のサプライチェーンでの遅れや製造キャパシティの限界が影響しています。
同社は、供給網の多様化や主要な半導体メーカーとの協力強化などを通じて、この課題に対処しようとしています。特に、AI向け高性能プロセッサの供給で強みを持つエヌビディア(NVDA)との関係が注目されていますが、エヌビディア側はスーパーマイクロへの供給割り当てに変更はなく、現状は「非常にポジティブな状況」としています。
株価の急落と投資家の不安
今年初めにS&P 500に組み入れられ、AI需要に支えられて株価が上昇していたスーパーマイクロですが、現在の株価は3月のピークから75%以上下落しています。この急落の主な要因は、監査法人EYの辞任や10-K財務報告の遅延によるガバナンスに対する不安、そして半導体供給不足による製品出荷の遅れが影響しています。
今後の見通しとしては、ガバナンス強化や財務報告の早期提出が求められ、これらが達成されれば株価の回復が期待されるものの、投資家心理の回復には時間がかかる可能性があります。EYの辞任や10-K財務報告の遅延により、ナスダック上場廃止リスクも増大しています。この上場廃止リスクは、企業にとって資金調達の難化やブランドイメージの悪化といった重大な影響をもたらし、投資家にとっても株価の大幅な変動や流動性の低下といったリスクを伴います。このような状況を受け、ニーダムのアナリストであるクィン・ボルトン氏はスーパーマイクロの格付けを「保留」としています。
今後の対応と上場維持への取り組み
ナスダックの規則では、スーパーマイクロは11月中旬までにコンプライアンスを回復するための計画を提出する必要があります。このコンプライアンスには、適時の財務報告書の提出やガバナンス体制の強化が含まれ、企業の透明性と信頼性を回復することが求められています。これにより、資金調達能力の維持や上場継続に向けた基盤が整うことが期待されます。
この計画が承認されれば、2025年2月までに必要な開示書類の提出期限が延長される可能性があります。最高財務責任者のデビッド・E・ウェイガンド氏によれば、同社は「できるだけ早く監査人を交代させる」ために取り組んでおり、ナスダックにも延長計画を提出する予定です。
まとめ:投資家への影響と見通し
スーパーマイクロコンピュータは、AI市場での需要に支えられながらも、財務上の課題に直面しています。特にAIサーバー関連製品の需要は、企業の収益に大きく貢献しており、エヌビディアの高性能プロセッサを利用した製品が好調に売れていることが売上の一部を支えています。
これにより、AI分野での成長ポテンシャルが引き続き期待されていますが、ガバナンスや財務報告の課題が投資家の懸念材料となっています。今後の財務報告書の提出状況やナスダックへの対応が注目される中、投資家にとってはAI分野での成長ポテンシャルとガバナンス強化のバランスが重要となっています。
*過去記事はこちら スーパー・マイクロ・コンピュータ SMCI