デジタル広告業界は近年、AIの進化と共に大きな変革を遂げ、広告主はAIを活用することで、より効率的かつ効果的にターゲットオーディエンスにリーチできるようになっています。特に、プログラマティック広告の分野で注目される企業、トレードデスク（TTD）は、AIを駆使した広告プラットフォームを提供し急成長を続けています。
Grand View Researchによると、デジタルマーケティングにおけるAIツールへの投資は、2023年の158億ドルから2030年には820億ドルに増加する見込みで、年平均成長率は26%と予測されています。このような背景の中で、トレードデスクはAI技術を活用した新たな広告プラットフォームを提供し、2024年に入り株価は66%も急騰しました。
トレードデスクのAI活用と成長の加速
トレードデスクはブランドや広告主向けにデータドリブンなプログラマティック広告プラットフォームを提供しています。同社のプラットフォームを利用することで、広告主は動画、コネクテッドテレビ（CTV）、モバイル、ソーシャルメディアなど、複数のデジタルチャネルにわたりリアルタイムでターゲット層に広告を配信することが可能です。
2016年に初めてAIをプラットフォームに統合した同社は、昨年新たに「Kokai」と呼ばれるAI搭載のデジタル広告プラットフォームを発表しました。「Kokai」は広告主に以下のメリットを提供しています。
- クリック単価の削減：広告のクリック単価が平均36%削減
- アクション単価の低減：特定のアクションが達成された場合にのみ課金されるシステムで、アクション単価も34%削減
「Kokai」は毎秒1500万以上の広告インプレッションにアクセスし、最適なタイミングでターゲット層にリーチできるように設計されています。さらに、2021年に導入された「Solimar」から「Kokai」へ移行した顧客はリーチ数が70%増加しました。
2024年の好調な業績と今後の見通し
2024年上半期のトレードデスクの売上は前年同期比で27%増の10億8000万ドルに達し、1株当たり利益も29%増の0.66ドルとなり、前年同期の22%増を上回る成長を示しました。同社は第3四半期に少なくとも6億1800万ドルの売上を見込んでおり、前年比で25%増加する見通しです。
さらに、EBITDA（利息、税金、減価償却前利益）も前年同期の2億ドルから2億4800万ドルに増加することが予想され、25%の伸びが見込まれています。同社の経営陣は対象市場規模を1兆ドルと推定し、この広大な市場における成長ポテンシャルを見据えています。また、過去10年間で顧客維持率は95%を超えており、トレードデスクのプラットフォームがいかに粘着性の高いサービスであるかを示しています。
トレードデスクがもたらす投資機会
アナリストによると、2024年のトレードデスクの1株当たり利益は1.61ドルに達し、2023年から28%の増加が見込まれています。また、売上の成長率は2025年に一時的に19%に減速するものの、2026年には24%に加速するとの見方もあります。
トレードデスクの成長の原動力は、AI技術の活用によってデジタル広告の効率性を大幅に向上させた点にあります。特にAIプラットフォーム「Kokai」を通じて広告主の広告費用対効果を最適化し、売上の増加と株価の成長を両立させています。同社の予測を上回る売上成長が続けば、株価はさらに上昇する可能性があり、長期的な成長株として投資家にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
まとめ
トレードデスクはAI技術を駆使し広告主のROI向上を支援することで、急成長を遂げるデジタル広告業界で存在感を増しています。2024年の業績や売上見通しから、同社が今後も持続的な成長を続ける可能性が見えており、AIを活用した広告プラットフォームの提供が成長の鍵となっています。デジタル広告の未来を牽引するトレードデスクは、AI時代の投資チャンスとして注目に値する企業です。
＊過去記事はこちら トレードデスク TTD