エヌビディア(NVDA)の株価は10月31日に4.72%下落しました。
投資家の間では、AI分野における支出の減速とAIチップの納入遅延が懸念されています。特に半導体業界全体に影響が及び、PHLX半導体指数(^SOX)は4%以上の下落を記録しました。PHLX半導体指数は、主要な半導体メーカーの株価パフォーマンスを示す指標であり、業界全体の健康状態を反映しています。本記事では、AI関連市場の動向、影響を受けた企業、今後の見通しについて詳しく解説します。
エヌビディア株価下落の背景:AIチップ需要と供給の問題
米国を代表するAI半導体企業であるエヌビディアは長年成長を続けていますが、最近の動きに不安を感じる投資家が増えています。同社は多くのデータセンターで使用されるGPU(グラフィック処理ユニット)を供給しており、AI技術の需要が高まる中、急激な供給の遅延が問題視されています。
マイクロソフト(MSFT)は最新の決算報告で、AI事業に関わるサードパーティー製AIチップの納入に遅延が生じており、業績予測に影響を及ぼしていると発表しました。これは、AIプロジェクトの立ち上げに必要なハードウェアの不足により、AIクラウドサービスの展開が予定より遅れているためであり、特に主要顧客向けのサービス提供に支障が生じていることが背景にあります。
エヌビディアのGPUがマイクロソフトのAIクラウド事業における主要ハードウェアであるため、エヌビディアの生産・納入の遅れが直接的に影響を与えています。D.A. Davidsonのアナリストであるギル・ルリア氏は、「マイクロソフトはデータセンターの立ち上げが遅れており、エヌビディアのチップをタイムリーに入手できていない」と指摘しています。このような不確実性がエヌビディア株価の急落を引き起こした可能性があります。
半導体業界への広範な影響
エヌビディアだけでなく、他の主要半導体企業も影響を受けています。エヌビディアのライバル企業であるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は3.0%の株価下落を記録し、インテル(INTC)やクアルコム(QCOM)も3%近くの下落を見せました。また、ブロードコム(AVGO)は3.9%、アーム(ARM)は9%近く急落し、業界全体が売り圧力にさらされています。
このような広範な下落の一因として、マイクロソフトやアルファベット(GOOGL)などの主要企業がAI関連支出の減速を示唆していることが挙げられます。アルファベットは、今後のAIやその他の成長分野への投資において、コスト管理を重視し、第4四半期の資本的支出を増加させない方針を明らかにしました。これにより、AI分野における新規プロジェクトの立ち上げが遅れる可能性があり、成長スピードが鈍化することが懸念されます。特に、クラウドサービスや広告技術に関連するAIの導入が抑制されることで、短期的な業績への影響も予想されます。
マイクロソフトの業績見通しとAI支出の鈍化
マイクロソフトの最高財務責任者(CFO)であるエイミー・フッド氏は、「AIを基盤とした支出の増加ペースは今後緩やかになる」と述べています。この背景には、AI関連インフラ整備に伴うコスト増加や供給制約があり、それにより支出のペースを抑えざるを得ない状況があります。この発言は、エヌビディアの成長期待を抑える要因となり、投資家心理に影響を与えました。フッド氏によれば、AI関連クラウドサービスに対する需要が続く限り資本的支出は安定的に増加するものの、過去数四半期の急成長とは異なり、そのペースは鈍化する見込みです。
アルファベットのアナト・アシュケナージCFOも、「AI投資の増加は続くが、2025年までの増加ペースはこれまでより落ち着くだろう」と述べており、業界全体でAI関連支出の鈍化が明確になってきています。
エヌビディア第3四半期決算への注目
エヌビディアは11月21日に第3四半期の決算を発表する予定です。ブルームバーグのコンセンサス予測によると、アナリストはエヌビディアの1株当たり利益が84%増の0.74ドル、売上が83%増の330億ドルに達すると見込んでいます。しかし、AI分野での成長鈍化の懸念が残る中、これらの予測を上回る利益成長や売上の達成が可能か、特に供給遅延や市場需要の動向に注目が集まっています。
今後の展望と投資家への影響
今回のエヌビディア株価下落や半導体業界全体への影響は、AI需要がピークに達しつつある可能性を示唆しています。大手テクノロジー企業は依然としてAI関連支出を増やしていますが、その増加ペースは鈍化しています。マイクロソフトやアルファベットが資本的支出を抑制し始めていることも、将来のAI需要の鈍化を裏付ける要因です。
エヌビディアの第3四半期決算結果が発表されることで、AI分野に対する投資家心理や今後の業界動向がさらに明らかになるでしょう。投資家は、特に供給遅延の解消やエヌビディアの生産能力の改善がどの程度進んでいるかに注目しており、これが株価に対する市場の反応を左右する可能性があります。
また、AI関連支出の鈍化がどの程度エヌビディアの業績に影響を与えるかも重要な関心事となっています。特に供給遅延やAI支出の減速が解消されるかどうか、供給チェーンの改善状況や主要顧客のAI関連投資動向などの指標を引き続き注視する必要があります。
まとめ
エヌビディアの株価下落はAI支出の減速やチップ供給遅延による影響が大きいと見られます。今後もAI分野における需要の増加が予想される一方で、そのペースが鈍化する兆しも見え始めています。エヌビディアがどのような戦略を取るのか、また他のテクノロジー企業がどのように対応するのかが、投資家にとっての注目ポイントとなっています。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA