アップル(AAPL)は、年間で最も重要な販売時期に突入する中、中国市場での競争激化と低迷の長期化が懸念されています。10月31日に発表された同社の最新の四半期決算報告書では、12月期の売上高は1桁台前半の増加に留まる見込みで、これはアナリストが予想していた7%増加を下回ります。また、中国での売上も前年同期比で減少しており、同地域におけるアップルの成長鈍化が浮き彫りとなっています。
売上の回復とその限界
2024年度の売上は4四半期連続で減少したものの、直近の2四半期でやや回復を見せました。特にiPhoneの売上が主要市場で好調であったことが全体の売上増加を支え、ウォール街の予測を上回る結果となりました。しかし、中国市場での競争激化やスマートフォン市場の成長鈍化、規制当局の監視強化などの外的要因が依然として大きな課題です。この影響でアフターマーケットで株価は約2%下落し、アップルの成長戦略に不安が生じています。
中国市場での苦境と現地ブランドとの競合
中国市場はアップルにとってアメリカ、ヨーロッパに次ぐ大規模な売上源ですが、第4四半期の売上は前年から減少し、150億ドルにとどまりました。これはアナリスト予測の158億ドルを下回る結果です。CEOのティム・クック氏は、iPhoneはすべての市場で成長しているものの、中国市場ではiPhone以外の製品の売上が課題である可能性を指摘しました。
また、中国では地元ブランドのVivoやOppoなどがシェアを拡大しており、政府機関での外国技術の使用制限が強化される中、アップルにとって逆風が吹いています。クック氏は先月、中国を訪問し今後の協力と投資について話し合いましたが、Apple IntelligenceなどのAI機能を現地で展開するには現地パートナーの確保が必要です。
iPhone 16、Apple Watch、AirPodsによる売上拡大の可能性
アップルは9月に新型iPhone 16、Apple Watchのアップデート、新型AirPodsを発表し、製品ラインナップを強化しました。これらのデバイスは消費者向けデバイスの大半を占めており、特にiPhoneの売上は462億ドルと予想を上回りました。2025年にはApple Intelligenceを搭載した低価格モデルiPhone SEの発売も予定されており、さらに幅広い市場への浸透が期待されています。
サービス事業の成長と課題
アップルのサービス事業はこの四半期に過去最高の250億ドルを記録しましたが、アナリスト予測の253億ドルには届きませんでした。特にApp StoreはEUをはじめとする規制の影響を受けており、サードパーティのアプリストアや異なる支払い方法の許可が長期的な売上成長への足かせとなる可能性があります。
CFOのルカ・マエストリ氏によると、サービス部門は今後も2桁成長が続く見込みであり、さらなる売上拡大が期待されますが、App Storeを巡る規制への対応が重要なポイントとなりそうです。
AIと新技術の導入による未来の展望
アップルは今後のAI技術の導入にも積極的です。12月にはOpenAIのChatGPTを組み込んだ生成AI機能を提供し、iPhoneの画像編集やデジタルアシスタントSiriの大幅なアップデートも予定されています。ただし、Apple Intelligenceの本格的な機能提供はまだ先であり、この分野での市場シェアの確保は不透明です。
さらに、ロボット工学やスマートホーム市場への再参入も計画しており、スマートデバイス分野での競争力を高める戦略を模索しています。より手頃な価格のヘッドセットやAI対応デバイスの開発も進行中です。
成長の持続と課題の克服
アップルは依然として世界で最も価値のある企業ですが、中国市場での苦戦、規制対応、製品ラインナップの再構築など、解決すべき課題が山積しています。投資家にとっては、これらの課題をどのように克服し、持続的な成長を実現するかが重要な焦点です。
12月のホリデーシーズンに向けて新製品の売上が期待される一方、サービス事業やAI技術といった新たな成長ドライバーをどのように発展させるかが、今後のアップルの鍵となりそうです。
*過去記事はこちら アップル AAPL