生成AIの旗手、マイクロソフトの株価低迷の裏にある真実

マイクロソフト(MSFT)は、生成AI分野でのパイオニアとして高い評価を受け、2023年には株価が57%近く急騰し、投資家に大きな利益をもたらしました。しかし、ここ数か月、AI関連銘柄に冷や水が浴びせられたことで、マイクロソフトの株価パフォーマンスは大きく低下しています。現在、年初来の株価上昇率はわずかに10.64%で、他の大手テクノロジー企業やS&P 500を大きく下回っている状況です。なぜ、かつてAI市場をリードしていた同社が、このような苦境に立たされているのでしょうか?この記事では、その理由と今後の展望を探ります。

業績は好調、しかしAI投資が重荷に

まず、マイクロソフトのビジネス全体は好調を維持しています。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによれば、2024年6月に終了した会計年度では、売上が前年比16%増の2451億ドルに達し、過去最高を記録しました。また、営業利益率も44.6%に上昇し、2001年以来の高水準となっています。しかし、AI関連技術への莫大な投資が利益率を圧迫しています。

マイクロソフトは、2023年度に557億ドルの資本支出と設備リースを計上しました。これは売上の23%に相当し、過去5年間の平均14%を大きく上回っています。この支出の多くは、エヌビディア(NVDA)の高価なチップや液冷システムなどのAIインフラストラクチャに向けられています。同社のCFOであるエイミー・フッド氏は、資本支出が今後さらに増加する見通しであると述べていますが、この増大する支出が同社のフリーキャッシュフローを圧迫しており、投資家の期待に応えるには不十分な状況です。

AI収益化の課題と投資家の期待

マイクロソフトの生成AIツール「コパイロット」などの製品は注目を集めていますが、これまで具体的な売上を公表していないことが投資家の不安を引き起こしています。フッド氏によれば、Azureクラウドサービスの売上成長のうち8%はAIサービスによるものですが、これが今後も持続的に利益をもたらすかは不透明です。モルガン・スタンレーのアナリスト、キース・ワイス氏は、「生成AIの成功には、さらなる努力が必要だ」と述べており、投資家の忍耐が限界に近づいていると指摘しています。

会計変更によるさらなる不透明感

さらに、マイクロソフトは2024年8月に事業セグメントの売上構造を変更しました。この変更により、Azureクラウド事業の成長率は高く見積もられる一方で、実質的な売上は減少する可能性があります。これにより、過去との業績比較が難しくなり、投資家にとっては判断がさらに難しくなると予想されています。

OpenAIとの関係と競争の激化

マイクロソフトはOpenAIとの提携を強化し、130億ドルの投資を行いましたが、この動きが必ずしもプラス材料とはなっていません。OpenAI自身が幹部の退社や営利企業への転換など、内部的な混乱を抱えており、これがマイクロソフトの競争力に影響を与える可能性があります。また、他のテクノロジー企業がAI分野で急速に追い上げている中、マイクロソフトのプレミアム評価が揺らぎつつあると指摘するアナリストもいます。

まとめ

マイクロソフトは依然として世界最大級のソフトウェア企業であり、多くのアナリストは同社の将来に対して楽観的な見方をしています。しかし、AI技術への莫大な投資が短期的には利益を圧迫し、競争の激化も同社のプレミアム評価に影響を与えています。投資家としては、マイクロソフトの長期的な成長戦略に対して忍耐を持つことが求められています。

*過去記事 マイクロソフト MSFT

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