クアルコム、インテル買収に向けた動きに対する懐疑的な見解

  • 2024年9月22日
  • 2024年9月22日
  • BS余話

先週末、ウォール・ストリート・ジャーナルによる報道で、クアルコム(QCOM)がライバル企業のインテル(INTC)に対して買収の打診をしているとの情報が明らかになりました。しかし、この動きに対して市場からは懐疑的な声が上がっています。特にガベリ・ファンドのポートフォリオ・マネージャーであるヘンディ・スサンタ氏は、この取引が成立する可能性や、それがクアルコムにとって利益になるかどうかについて疑問を呈しています。

クアルコムにとってのリスク

スサンタ氏は、「クアルコムがインテルを買収すれば、インテルが直面している課題をそのまま引き継ぐことになる」と指摘しています。インテルは、現在AI分野やモバイル端末向けのチップ開発でエヌビディア(NVDA)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、ブロードコム(AVGO)といった競合に後れを取っている状況です。また、インテルが依然としてパソコンやサーバー向け半導体市場ではトップの地位を保っているものの、AMDがそのシェアを着実に奪いつつあります。

スサンタ氏は、クアルコムがこのような課題を解決できる「独自性」がないと述べ、クアルコムの粗利益率や営業利益、一株当たり利益、キャッシュフローに「重大な財務的打撃」を与えると懸念しています。

TSMCへの依存度は軽減されない

さらに、仮にクアルコムがインテルを買収したとしても、クアルコムが依存している台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)への依存度が軽減されることはほとんどないというのがスサンタ氏の見解です。TSMCは、インテルを上回る製造技術を有しており、クアルコムは今後も短期的・中期的にはTSMCの技術に依存せざるを得ない状況が続くと予測しています。

クアルコムの財務状況と買収能力

クアルコムの時価総額は約1880億ドルで、インテルの時価総額950億ドルを大きく上回っています。また、クアルコムの最新の決算報告書によると、同社は約130億ドルの現金を持っています。これにより、クアルコムはインテルとの契約を締結するための余裕を持っていると見られています。

一方で、インテルの株価は今年に入ってから55%以上も下落しており、ダウ平均株価構成銘柄の中で最もパフォーマンスが悪い状態です。これに対し、クアルコムの株価は約20%上昇しています。

ブロードコムによるインテル買収の可能性

インテルに対するもう一つの買収候補として、スサンタ氏はブロードコムを挙げています。ブロードコムは、インテルの資産を一部保持し、残りを売却するという形でインテルを買収する可能性があると述べています。しかし、ブロードコムは昨年VMwareを買収しており、その統合プロセスに取り組んでいる最中です。また、ブロードコムの株価はクアルコムよりも好調で、50%も上昇しています。これらの要素から、インテルの買収に踏み切る可能性は低いと見られています。

まとめ

クアルコムがインテルの買収を進める可能性については、懐疑的な見方が強まっています。インテルが抱える数々の課題を考慮すると、クアルコムにとってこの買収は財務的に大きなリスクを伴うことが予想されます。また、クアルコムの投資家がこのような巨大な買収に対して肯定的な姿勢を示すかどうかも疑問です。インテルの今後については、ブロードコムなど他の企業が買収に乗り出す可能性も指摘されていますが、現時点ではその実現性も低いとされています。

クアルコムの今後の動向には引き続き注目が集まりますが、市場は慎重な姿勢を保っています。

*過去記事「インテル株価が急上昇!AWSとの提携でAIチップ競争に新たな動き

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