9月は荒々しいスタートを切りましたが、月末にかけては穏やかな終わりが見えてきました。しかし、多くの投資家やアナリストがさらなる上昇を期待する中、米国の投資会社シュティフェルのチーフ株式ストラテジストであるバリー・バニスター氏は、第4四半期には行き過ぎた楽観主義が投資家を苦しめる可能性があると警告しています。
バニスター氏は、S&P 500が年内に5,000台前半まで調整する可能性を指摘しており、現在の市場に対して慎重な姿勢を崩していません。同氏は、市場が感情的な熱狂に巻き込まれやすい一方で、冷静な分析が重要であると強調しています。
9月の市場動向
9月は当初、株価の下落が懸念されましたが、結果的には3つの主要指数、ダウ平均株価、S&P 500、ナスダック総合指数がいずれも1%以上の上昇を見せ、9月の初期の損失を帳消しにしました。
特に9月19日は市場にとって素晴らしい日でした。ダウ・ジョーンズ工業平均指数とS&P 500指数はともに過去最高値を記録し、それぞれ2024年では28回目と39回目となりました。ナスダック総合指数も8月8日以来最大の1日のポイント上昇とパーセンテージ上昇を記録し、この祝宴に参加しました。AI技術の進展や経済の相対的な強さに支えられ、多くのストラテジストがさらなる上昇を予想しています。
一方で、バニスター氏はこの上昇に対して慎重な姿勢を取っており、過去12か月間のS&P 500の株価収益率(P/Eレシオ)が26倍を超えていることに注目しています。これは過去100年間で最も高い水準に迫っており、過去のトレンドから見ても、これは不況や弱気相場の予兆となる可能性があると指摘しています。
労働市場とFRBの影響
米国経済は現在、労働供給の増加に支えられていますが、バニスター氏は労働需要の減少が不況の兆候になると懸念しています。また、2024年の大統領選挙後に期待される不確実性の解消が、株価上昇につながるかどうかについても疑問を呈しています。特に、米連邦準備制度理事会(FRB)が追加の金融政策を打ち出さなければ、株式市場の上昇は持続しない可能性があると警告しています。
テクノロジーセクターのリスク
バニスター氏は、特にテクノロジーセクターに対する過度な楽観主義が市場のリスクを増幅していると見ています。1990年代のITバブルを引き合いに出し、現在のAIやハイテク株の急成長は、リスクが正しく評価されていない可能性があると指摘しています。
株式リスクプレミアムが低い現在の市場環境では、今後10年間のS&P 500の年平均リターンは名目リターンで6%、実質リターンでは3%程度に留まる可能性が高いと同氏は予測しています。また、地政学的リスクが高まる中で、バブル崩壊のリスクは一層顕著になっているとしています。
投資家へのアドバイス
バニスター氏は、過度な楽観主義に流されることなく、冷静な分析に基づいた投資判断を行うことの重要性を強調しています。特に、テクノロジー株に偏ったポートフォリオを持つ投資家に対しては、ディフェンシブなバリュー株へのシフトを検討するようアドバイスしています。市場全体が不確実性に満ちている今、慎重な戦略が必要です。
第4四半期に向けて、バニスター氏のような弱気な見方は少数派かもしれませんが、市場が変わりやすい状況であることを踏まえると、どのような展開が待ち受けているのかを注視することが求められます。特に11月5日までは、この不安定な状況が続く可能性が高いと予測されています。