エヌビディア(NVDA)とアブダビを拠点とする人工知能(AI)企業G42が提携し、気候技術研究所(climate technology lab)を設立することが発表されました。これは、エヌビディアにとってアラブ首長国連邦(UAE)のAIトップ企業との初の提携であり、今後の気候技術に対する新たな一歩を踏み出すものとなります。
天気予報の精度向上を目指すAI技術
両社は、AIを活用して天気予報の精度を向上させる取り組みを開始します。エヌビディアが提供するオープン・プラットフォーム「Earth-2」を基盤に、気候や天候の予測を可能にする高度なモデリング技術を開発します。Earth-2は、気候変動に対応するためのリアルタイムなデータ活用を促進する重要なツールであり、今後の気候技術に革命をもたらす可能性があります。
気候技術研究所の役割
アブダビに設立される気候技術研究所は、両社の協力による研究開発のハブとして機能します。この研究所では、100ペタバイトを超える地球物理データを活用し、カスタマイズされた気候および気象ソリューションを提供する予定です。これにより、気候予測の精度が大幅に向上し、気候変動に対する具体的な対策が可能になることが期待されています。
エヌビディアのCEOであるジェンスン・フアン氏は、この提携について次のようにコメントしています。
「Earth-2気候技術研究所は、最先端の加速コンピューティングとAI技術を活用した環境ソリューションを推進するでしょう。」
エヌビディアのAI分野における躍進
エヌビディアは、AI技術の開発とチップ製造において世界をリードしています。同社は、気候変動や気象予測をはじめとする複雑な問題に対応するための技術革新を進めており、2026年に向けて次世代プラットフォーム「Rubin」の開発にも取り組んでいます。
また、同社の「Omniverse」と呼ばれる仮想空間を活用し、現実世界のデジタルツイン(デジタル上での再現)技術も推進中です。この技術は、気象パターンのモデリングなど、気候変動対策において重要な役割を果たすことが期待されています。
G42のグローバルな展開とUAEのAI戦略
G42は、アラブ首長国連邦の国際的なAI企業であり、AI技術の研究開発をリードしています。今年初めには、G42は米国政府との協議を経て、中国との協力を終了した後、マイクロソフト(MSFT)から15億ドルの投資を受けました。また、G42は米国のOpenAIとも提携し、AI技術の拡大を進めています。
エヌビディアとの提携は、UAEが中東におけるAI大国としての地位を確立するための重要な一手となります。G42のCEOであるPeng Xiao氏は、今回の提携について次のように述べています。
「この提携は、イノベーションだけでなく、重大な世界的課題の解決にもつながります。」
AIとテクノロジーで未来を切り開くUAE
エヌビディアとG42の協力は、UAEの国家安全保障顧問であり、アブダビの副首長であるシェイク・タヌーン・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン氏が率いる1兆5000億ドル規模の事業帝国の一環として行われています。UAEは、AIとテクノロジー分野におけるリーダーシップを強化し、今後のグローバルな競争力を高めることを目指しています。
さらに、UAEのムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領は、来週ワシントンを訪問し、ジョー・バイデン大統領およびカマラ・ハリス副大統領と会談する予定です。大統領の訪問は、AIやテクノロジーにおける提携を強化するための重要な機会とされており、今回のエヌビディアとの提携もその一環として注目されています。
まとめ
エヌビディアとG42による気候技術研究所の設立は、AI技術を活用した気候変動対策の新たな一歩です。両社の連携により、気候予測の精度向上や環境持続可能性への取り組みが加速し、UAEが中東のAIハブとしての地位を確立するための重要なプロジェクトとなりそうです。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA