S&P 500指数(SPX)のエネルギー銘柄は、2024年の年初来リターンで約6%にとどまり、指数全体の19%という成績に及んでいません。この背景には、原油と天然ガスの価格低迷、供給過剰、そして世界経済の減速への懸念が影響しています。しかし、そのような厳しい市場環境においても、インカム投資家にとって魅力的な配当利回りを提供する企業が存在します。
エネルギー企業の資本還元戦略の変化
エネルギー業界では、過去のサイクルからの方針転換として、多くの企業が自社株買いや配当を通じて株主に資本を還元することに重点を置くようになっています。モーニングスター社のレポートでは、この資本規律の強化が株主への堅実なキャッシュ還元を可能にしていると指摘されています。エクソンモービル(XOM)、シェブロン(CVX)、コノコフィリップス(COP)などの大手総合エネルギー企業は、その例として挙げられます。
主なエネルギー株の配当利回りとリターン
以下は、主要エネルギー企業の株価、配当利回り、および年初来のリターンをまとめたものです。
会社名(ティッカー) | 株価 | 配当利回り | 年初来リターン |
---|---|---|---|
BP (BP) | $32.55 | 5.9% | -4.5% |
シェブロン (CVX) | 143.41 | 4.5 | -0.8 |
コノコフィリップス (COP) | 108.29 | 2.9 | -4.8 |
エクソンモービル (XOM) | 114.18 | 3.3 | 17.1 |
シェル (SHEL) | 68.15 | 4.0 | 6.7 |
SLB (SLB) | 41.50 | 2.7 | -18.7 |
これらの企業は、配当利回りが比較的高く、特にエクソンモービルは17.1%の年初来リターンを記録しており、堅調なパフォーマンスを見せています。一方で、原油と天然ガスの価格が下落する中で、業界全体の株価は圧力を受け続けています。
エネルギー企業のバランスシートと配当の安定性
エネルギー分野の企業は、配当の安定性を保つためにバランスシートを改善しています。たとえば、シェブロンは2020年末の443億ドルの負債から、2024年6月時点では232億ドルにまで減少させています。また、これらの企業は、減配に直面する前に自社株買い戻しを調整する余地があります。
さらに、エクソンモービルとシェブロンは、25年以上連続して増配を行っている「S&P 500 Dividend Aristocrats(配当貴族)」の一員です。これにより、長期的な投資家にとっての信頼性が高まっています。
高成長のシェールオイルとエネルギー株の展望
エクソンモービル、シェブロン、コノコフィリップスは、特に米国のシェールオイルに大きく関与している点で有利です。コノコフィリップスは、低コストで成長できる可能性が高く、これが配当の回復力を支えると考えられています。探査・生産企業としての同社は、普通配当と変動配当を支払っており、市場状況に応じて配当額を調整できる点も投資家にとって魅力的です。
SLBの将来性
また、エネルギー分野で注目すべきもう一つの企業がSLB(旧シュルンベルジェ)です。同社は、デジタルサービスやコンサルティング、石油サービスに重点を置いており、利益率の向上が期待されています。SLBの配当利回りは2.7%と比較的低いものの、成長性に期待が持てる銘柄とされています。
まとめ:エネルギー株の魅力
エネルギー株は、原油や天然ガス価格の変動に左右されるものの、長期的な成長と配当利回りを兼ね備えた投資対象として魅力があります。特に配当貴族に属するエクソンモービルやシェブロンなどは、安定した配当を提供し続けています。投資家は、これらの企業のバランスシートの強化と、自社株買い戻しによる株主還元の動向に注目しながら、堅実なインカムを狙うことができます。
*過去記事はこちら 配当株