テクノロジー企業が配当を始める理由:成長株の新しい戦略とは?

配当といえば、かつては公益事業や高齢者向けの投資に関連するものというイメージが強かったですが、今やその常識が変わりつつあります。メタ・プラットフォームズ(META)やアルファベット(GOOGL)、セールスフォース(CRM)といった大手テクノロジー企業が2024年に入り、相次いで四半期配当を開始。また、エヌビディア(NVDA)は配当金を150%増額し、配当戦略を強化しています。

この動向に、多くの投資家が「テクノロジー企業は成長株として期待していたのに、配当を支払うということは成長が鈍化しているのでは?」と疑問を抱いていることでしょう。実際に、配当を支払うテクノロジー企業が増えている背景には、成長の成熟や経営判断の変化があるものの、それが即座にネガティブなシグナルを意味するわけではありません。

配当の意味について、よく言われる3つの考え方が変わりつつあるようです。


配当は成長の終わりを意味するのか?

「成長企業は配当を支払わない」とよく言われますが、この考え方は必ずしも正しくありません。確かに、メタやアルファベットが配当を始めたのは、これらの企業が成長の成熟期に入りつつあることを示していると言えます。しかし、成長の終わりではなく、投資家にとって新たな利益を還元する段階にあることを示しています。

例えば、マイクロソフト(MSFT)やアップル(AAPL)は、配当を開始した後も株価が成長を続けています。マイクロソフトは2003年に配当を開始しましたが、その後も年率16%のリターンを記録し、S&P 500のリターンを上回っています。同様に、アップルも2012年に配当を開始して以来、年率23.2%のリターンを実現しています。

これらの例からも、配当の支払いが企業の成長を止めるものではなく、むしろ成熟した成長企業としての安定性を示すものだと言えます。


配当金の支払いは経営陣の能力不足を意味するのか?

「配当を支払うよりも、経営陣がその資金を再投資すべきだ」という意見は多いですが、実際には配当金の支払いは経営陣の健全な判断を表すことが多いです。企業が莫大なキャッシュを保持していると、その資金を無駄なプロジェクトに投資するリスクが高まることがあります。

例えば、アップル(AAPL)は自動運転技術に多額の投資を行いましたが、成果が出なかったため事業を閉鎖しました。このような無駄な投資を防ぐためにも、配当金として資金を株主に還元することは、健全な資本管理といえます。

また、配当を約束することは経営に規律を与える要素ともなり、企業が安易に大規模な無駄遣いを避ける抑止力として働きます。


テクノロジー企業の配当は利回りが低すぎて意味がない?

一部の投資家は「メタやアルファベット、セールスフォースの配当利回りは1%未満だから、あまり気にする必要はない」と考えます。しかし、利回りが低いからといって配当金が無意味というわけではありません。

これらのテクノロジー企業は今後も成長を続けることが期待されており、将来的に配当金を増額する可能性があります。また、配当金の支払いは企業がその未来に自信を持っていることのシグナルと見なされることが多いです。投資家への安定的な還元を示すことで、株式の魅力を高め、長期的な株主基盤を強化する狙いがあります。

さらに、自社株買いと配当金の選択肢がありますが、配当金は幅広い投資家層にとってアピール力があります。自社株買いが必ずしも最良の手段であるとは限らず、多くのテクノロジー企業が株価のタイミングを誤った自社株買いで価値を損ねた例も見られます。


まとめ: テクノロジー企業の配当戦略は新たな時代を象徴

テクノロジー企業による配当金の支払いは、これまでの「成長企業=配当なし」という概念を覆すものです。長期的に成長を続ける一方で、安定的なキャッシュフローを確保し、株主への還元を行う企業は、投資家にとって魅力的な選択肢となります。

今後もテクノロジー企業が成長と配当のバランスを取る動きは続くと予想されます。投資家としては、成長性と安定性を兼ね備えた企業への投資が、より重要な戦略となっていくと考えられます。


*過去記事はこちら 配当株

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