エヌビディア、巨額の自社株買いを発表 – 投資家にとって良いシグナルか?

世界をリードする半導体企業であるエヌビディア(NVDA)は、最近の決算発表において、株主へのリターンをさらに拡大する計画を発表しました。エヌビディアは新たに500億ドルの自社株買いを承認し、これは昨年発表された250億ドルのプログラムの2倍の規模です。なお、前回のプログラムでは75億ドルがまだ未使用のまま残っていました。

エヌビディアの株式は、今年度上半期で約150億ドル分が自社株買いされました。新たな自社株買いプログラムの規模から判断すると、エヌビディアは今後さらに自社株買いを加速させる可能性があります。

自社株買いの意義とその影響

企業が自社株買いを行うと、発行済株式数が減少し、一株当たりの利益(EPS)が向上する可能性があります。S&P Visible Alpha TMTのアナリスト、メリッサ・オットー氏によれば、エヌビディアのこの動きは、アルファベット(GOOGL)の過去数年間の700億ドルの自社株買いプログラムと類似しているそうです。

オットー氏は、「エヌビディアがこのような大規模な自社株買いを発表することは、企業が株主利益を重視し、事業の成長だけでなく株主へのリターンにも目を向けている証拠」と指摘しています。

巨額キャッシュフローと自社株買いの意図

メリウス・リサーチのベン・レイツェス氏は、エヌビディアが今後3年間で2,700億ドルのフリーキャッシュフローを生み出す可能性があると予測しています。同氏は、「このキャッシュフローの急増により、エヌビディアは多額の現金を株主に還元する余裕が生まれる」と述べています。

この新たな自社株買いプログラムは、メタ・プラットフォームズ(META)が発表したものと並び、今年発表された自社株買いプログラムの中で3番目に大きい規模です。また、過去にはアップル(AAPL)の1,100億ドル、アルファベットの自社株買いプログラムがこれを上回るのみです。

エヌビディアの時価総額は約2.91兆ドルであり、今回の自社株買い承認額はその1.7%に相当します。

投資家の反応と懸念

StoneXのシニアストラテジストであるジェームズ・スタンリー氏は、エヌビディアの自社株買いプログラムに対して投資家があまり興奮しなかったことを指摘し、「エヌビディアのCEOであるジェンスン・フアン氏が株式を売却しているタイミングでの自社株買いは適切ではないかもしれない」と述べています。

スタンリー氏は、エヌビディアの株価が過去2年間で大幅に上昇したことを踏まえ、フアン氏が株を売却すること自体は理解できるとしながらも、「株価が過去最高値付近にある時に財務資金を使って自社株を買い戻すのは疑問が残る」と指摘しています。

さらに、エヌビディアの株価は割高であり、現在の価格売上高倍率(P/S比)は37倍に達しています。

今後の展望とエヌビディアの戦略

スタンリー氏は、エヌビディアが人工知能(AI)ハードウェアの需要が供給を上回っている現状で、インフラストラクチャの能力向上に現金を注ぐことはないと考えています。テスラ(TSLA)の例を挙げ、過剰な生産能力が収益性を圧迫する可能性があるため、エヌビディアが需給バランスを慎重に考慮していると述べています。

また、現行の規制環境下では、エヌビディアが巨額の現金を用いて大規模な買収を行うことが難しいとも考えられます。Gimme Creditのアナリスト、デイブ・ノボセル氏は、エヌビディアは今年度上半期に約3億ドルを買収に費やしたものの、今後の買収は小規模なものに留まると予測しています。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

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