エヌビディア(NVIDIA)の共同創業者兼CEOであるジェンスン・ファン氏は、これまでウォール街の高い期待に応え続けてきましたが、今回の決算発表ではいくつかの懸念を完全に払拭することができませんでした。同社の急成長が若干の遅れを見せていることや、新製品「Blackwell」のローンチが遅れていることが影響しています。
第3四半期の見通しが予想を大幅に上回れず
エヌビディアは、第2四半期に予想を上回る業績を発表しましたが、第3四半期の見通しはウォール街の予想を大幅に上回るものではありませんでした。この結果、決算発表後の株価は急落し、アフターマーケットでは約7%の下落を記録しています。これは、過去2年半で最悪の決算後のパフォーマンスになる可能性がある状況です。
AI対応データセンター向けGPUの成長鈍化
過去2年間、AI対応のデータセンター向けに強力なグラフィックスプロセッサ(GPU)の販売が急増したことで、エヌビディアの売上と利益は大幅に増加しました。しかし、最近ではその成長が鈍化し始めており、特に売上総利益率とデータセンターセグメントの成長率が第1四半期と比較して減速しています。
次世代チップ「Blackwell」の遅延とその影響
成長鈍化の一因として、次世代チップファミリー「Blackwell」の量産が1四半期遅れたことが挙げられます。CFOのコレット・クレス氏は、量産歩留まりを改善するために「マスク変更」が行われたと説明し、「Blackwell」は第4四半期に量産が開始されると述べました。当初、第3四半期に量産が始まる予定だったため、この遅れがエヌビディアの業績に影響を与えています。
HopperファミリーとBlackwellへの期待
Hopper(H100 Hopperファミリー)の需要は依然として強く、Blackwellへの期待も非常に高いとファン氏は述べています。しかし、アナリストの一部は、H100ラインの価格引き下げが売上総利益率の低下の一因である可能性を指摘しています。これが、エヌビディアの収益にどのように影響を与えるかについては、今後の動向が注視されます。
投資家の懸念とAI投資のROI
一部のアナリストは、エヌビディアがAIへの多額の投資に対して、投資家が投資収益率(ROI)の証拠を求め始めていることについて質問しました。ファン氏は、新しいコンピューティングパラダイムへのシフトがより効率的であり、コスト削減が可能であると説明しました。特に、データ処理の効率化によりコストが削減されることがROIの大きな証拠であると強調しています。
クラウドサービスプロバイダーへの依存と懸念
エヌビディアの顧客であるクラウドサービスプロバイダーの生成AIスタートアップについても、一部の投資家は不安を感じています。ファン氏は、生成AIスタートアップがクラウドサービスに多額の投資を行っていることを指摘しましたが、これはかつてのサン・マイクロシステムズの成功とその後の崩壊を思い出させるかもしれません。サンは、ドットコムバブル期にスタートアップ企業にサーバーを販売して成功しましたが、そのバブルが崩壊した際に大きな打撃を受けました。
まとめ:次世代チップ「Blackwell」の成否が鍵
エヌビディアは、次世代チップ「Blackwell」の量産が来年に開始されることを示唆しており、AI、GPU、半導体産業におけるリーダーシップを維持するためには、「Blackwell」の成功が不可欠であると強調しています。しかし、現在見られるいくつかの懸念が一時的なものであるのか、それとも今後の成長に影響を及ぼす兆候であるのかは、現時点では明らかではありません。
エヌビディアの株価動向や、今後の業績については引き続き注視が必要です。特に「Blackwell」の進捗と、AI投資のROIについての市場の評価が、今後の株価に大きな影響を与える可能性があります。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA