データセンターや人工知能、暗号通貨マイニングなど電力を大量に消費するアプリケーションの増加に伴い、米国の電力需要が急速に増加しています。しかし、この増加は一部の州に集中しており、地域ごとにさまざまな影響を及ぼしています。本記事では、電力需要の急増による影響と投資機会について詳しく解説します。
電力需要の現状と将来予測
エネルギー情報局(EIA)によると、商業顧客向けの電力販売はようやくパンデミック前の水準まで回復し、2023年の消費量は2019年の水準を1%上回っています。しかし、その影響は州によって大きく異なります。例えば、バージニア州とテキサス州では商業用電力需要が大幅に増加している一方で、ニューヨーク州やカリフォルニア州では減少傾向にあります。
特にバージニア州は、世界で最も多くのハイパースケールデータセンターを有し、その電力需要の増加は顕著です。バンク・オブ・アメリカのアナリスト、アンドリュー・オビン氏によると、バージニア州では2030年までに8ギガワットの新たな電力が必要とされる見込みです。
電力不足のリスクと対策
TD証券のアナリスト、マイケル・エリアス氏は、バージニア州北部やオハイオ州中部、ダラス、シリコンバレーなどが電力不足に直面する可能性があると警告しています。これに対処するためには、新しい送電線やインフラの整備が急務となります。
一部の州は、データセンターの誘致による雇用創出を期待していますが、その効果は限定的です。例えば、ノースダコタ州では19億ドルのプロジェクトが進行中ですが、常用雇用はわずか30人程度とされています。
投資家にとってのチャンス
電力需要の急増は、独立系発電事業者やデータセンター関連企業にとって大きなチャンスとなります。例えば、コンステレーション・エナジー(CEG)やビストラ・エナジー、NRGエナジー(NRG)などは需要の高い原子力発電所を所有しており、特に好調です。
また、デジタル・リアルティー・トラスト(DLR)やエクイニクス(EQIX)、バーティブ・ホールディングス(VRT)などのデータセンター関連企業も恩恵を受ける可能性があります。さらに、ウルフスピード(WOLF)やインフィニオン、STマイクロエレクトロニクス(STM)、パワー・インテグレーション(POWI)などの電力関連半導体企業も注目すべきです。
環境への影響と持続可能なエネルギーの役割
電力需要の増加に伴い、環境への影響も考慮する必要があります。特に、使用する電力源によってその影響は大きく異なります。バージニア州やテキサス州では、再生可能エネルギーの利用が進んでおり、環境負荷の軽減が期待されています。
天然ガスメーカーのコテラ・エナジー(CTRA)は発電用の天然ガス需要が増加すると予測しており、ブルックフィールド・リニューアブル・グループは風力発電所や太陽光発電所の建設によって利益を上げる見込みです。
まとめ
電力需要の急増は、データセンターや人工知能、暗号通貨マイニングなどの電力を大量に消費するアプリケーションによって引き起こされています。この需要増加は一部の州に集中しており、地域ごとにさまざまな影響を及ぼしています。投資家にとっては、この急増する電力需要が新たな投資機会を提供していますが、一方で環境への影響も考慮する必要があります。持続可能なエネルギーの利用が今後ますます重要になると予想されます。
*過去記事「AIデータセンターの電力需要増加がもたらす投資チャンス」