最近の米国株市場は、人工知能の先進企業によって牽引されていると言っても過言ではない状況です。しかし、AI関連銘柄がもてはやされる一方で、価値のある投資対象となる「隠れた魅力」を持つ企業も存在します。ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)とトゥルイスト・ファイナンシャル(TFC)はそうした企業で、6%の高配当利回りを提供しながらも、現在、市場で過小評価されていると考えられます。
ベライゾン– 安定的な配当と成長の可能性
ベライゾン・コミュニケーションズは、キーバンク・キャピタル・マーケッツによって最近「セクターウェイト」から「オーバーウェイト」に格上げされました。
同社の「調整後Ebitda」の成長率は、2023年にはゼロとなりましたが、今年は2%を超えると予測されています。これは2018年以来2番目に高い成長率です。
ワイヤレス業界の競争は2024年には穏やかになると予測されています。同社の加入者数は幅広く伸びている一方で、解約率は安定しています。また、ユーザー一人当たりの収入は増加している一方で、ネットワーク投資のための資金需要は減少しています。
競争の緩和は、長年市場シェアで劣勢にあったベライゾンにとって特に有益です。同社のポストペイド(毎月定期的に課金される)アカウントのシェアは、2019年の41%超から昨年は推定36%に低下しましたが、キーバンクは、ここから顧客純増数が着実に改善すると予測しています。
ブロードバンドの勢いもプラス材料です。キーバンクは、ブロードバンドにおいて、通信事業者がケーブル事業者からシェアを奪っていると見ています。特にベライゾンは、5Gとフィオス(光ファイバーサービス)を含めると、2023年には100万以上の契約を追加していると推定されています。一方、AT&T(T)は、ブロードバンドにおけるシェアを失ったと推定されています。顧客数の増加とブロードバンドにおけるシェアの拡大、この2つの傾向は今年も続きそうだと見られます。
ベライゾンのフリー・キャッシュフローは、今年190億ドル(時価総額の11.5%)に近づくと予測されており、配当利回りは6.6%と見られています。また、2024年の債務削減、2025年の自社株買いもあり得なくはないと予想されています。
株価は40ドルあまりでフォワード利益の8.5倍で取引されており、5年間の平均である10倍強を下回っています。キーバンクは、短期的には45ドルまで上昇する可能性があると見ており、配当金を加えると、トータル・リターンは20%近くになります。
トゥルイスト・ファイナンシャル– 大きな成長潜在力と高い配当利回り
トゥルイスト・ファイナンシャルは巨大な企業ではありますが、投資家にとってはあまりなじみのない企業です。同社は2019年にサントラストとBB&Tの合併によって設立され、預金残高で米国第6位の銀行となりました。
これまでのところ、合併は株主に良い結果をもたらしておらず、株価は合併完了日以来21%下落しています。しかし、昨年9月に投資情報誌バロンズが推奨して以来、株価は30%上昇しました。BofA証券は最近、トゥルイスト株を「中立」から「買い」に格上げし、同社の将来に対して楽観的な見方を示しています。
同業他社に比べ、トゥルイストの純金利収入は、米連邦準備制度理事会(FRB)が予想通り利上げから利下げにシフトすることで恩恵を受けるだろうと予想されています。長期的には、米国南東部での事業展開が成長見通しを強化すると見られています。コスト削減も業績の改善に寄与するはずで、経営陣は、昨年の7%増から今年は横ばいからマイナス1%の範囲にコスト増を抑えることを目指しています。
人員と支店網を縮小し、技術や管理業務を統合することでコスト削減を図る予定です。BofAによれば、コスト削減は2024年以降も継続する余地があり、最近行われた取締役会の縮小や上級管理職の一部交代は、変化が加速していることを示唆しています。
また、米国第6位の保険ブローカーであるトゥルイスト・インシュアランス・ホールディングスの株式の80%をトゥルイストは保有しています。この持ち株を売却すれば、借入金を借り換え、一株当たり利益を増やすための現金を手にすることができます。BofAは、この事業を「差別化されている」としながらも「戦略的に不可欠ではない」と評価しています。
株価は約37ドルで、2024年の予想利益の10.8倍(パンデミック前は13倍以上)で取引されています。BofAによれば、1年以内に43ドルの値がつくはずで、そうなると、この株式のトータル・リターンは20%を超えることになります。
まとめ
投資は常にリスクを伴いますが、ベライゾンとトゥルイスト・ファイナンシャルのような企業は、安定した配当と成長の可能性を持ち合わせており、多様なポートフォリオ構築において魅力的な選択肢になると考えられます。
*過去記事 配当株