AIブームの恩恵を受ける隠れた巨人、シノプシスに注目!

  • 2023年12月23日
  • 2023年12月23日
  • BS余話

時価総額850億ドルの企業でありながら、シノプシス(SNPS)の名前はそれほど知られていません。半導体の設計に使われるEDA(エレクトロニック・デザイン・オートメーション)ソフトウェアの最大手であるこの企業は、AIブームの恩恵を受けるにもかかわらず、最も過小評価されている企業かもしれません。

シノプシスの成長とAIの時代

過去10年間、シノプシスは自動車から家電製品、電子機器に至るまで、消費者向け製品に搭載される半導体の普及とともに成長してきました。そして、来るべきAIの時代にはさらなる成長の可能性を秘めています。新興企業からクラウド・コンピューティング大手まで、AI半導体に対する需要の高まりと、シノプシス独自のAI搭載機能の積極的な展開は、シノプシスのソフトウェアに対する需要を今後数年間にわたり増加させる可能性があります。

AI半導体への需要増とシノプシスのソフトウェア

1月1日付でシノプシスの社長に就任する予定のサシーン・ガジ氏は生成AIに対する企業の関心は急上昇しており、シノプシスのソフトウェアで設計される高度な半導体への需要が高まっていると述べています。同氏によれば、シノプシスはマーケティング、人事、法務の各部門でAIを活用して効率性、正確性、安全性を向上させる方法を検討し始めているそうで、同社はすでに、生産性とワークフロー・プロセスを劇的に改善するいくつかのプロジェクトを導入する初期段階にあるそうです。AIがEDAとIP製品の開発を加速させる大きなチャンスであると同氏は語っています。

シノプシスの革新的な取り組み

シノプシスは最近、マイクロソフト(MSFT)との提携により「Synopsys.ai Copilot」を発表しました。これは、エンジニアにChatGPTのようなインターフェースを通じてトレーニングを提供するものです。ガジ氏は、この技術が半導体設計におけるAIの役割を進化させ、設計者の最小限の操作で半導体設計ができるところまで技術が進化すると見ています。

市場の見方

キーバンク・キャピタル・マーケッツのアナリスト、Jason Celino氏は、シノプシスのAIへのシフトが同社とその顧客に配当をもたらすと楽観的な見方をしています。

「AI対応設計は、EDA開発において過去30~40年で最大のブレークスルーとなる」と高く評価する同氏は、シノプスの格付けを「オーバーウェイト」とし、目標株価を現在の水準より約20%高い675ドルに設定しています。

半導体の設計は、シノプシスとライバルのケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS)、そしてシーメンスが2017年に45億ドルでメンター・グラフィックスを買収して生まれたシーメンスEDAの3社が独占しています。この分野は、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)が支配するファウンドリーや、ASMLが主導する半導体製造装置と同様に重要な市場であることは間違いありません。キーバンクによると、EDAソフトウェア・ツールの市場シェアは、この3社合計で約90%を占めており、最大のベンダーは35%のシェアを持つシノプシスです。

シノプシスの安定したビジネスモデル

ガートナーによると、2023年の半導体業界の売上は11%減少する見込みですが、シノプシスは15%売上が伸びるとの見込みを示しています。シノプシスは今後数年間、年間2桁の売上成長率と年間10%台半ばの1株当たり利益成長率を達成する目標を持っており、ガジ氏はこの財務目標を達成する自信を持っています。

まとめ

シノプシスの株価は、今後12ヶ月の予想利益の約40倍で取引されているため、安価とは言えませんが、AIが今後も高い成長率をもたらす可能性を考えれば、その価値は十分にあります。シノプシスは、AI時代における重要な存在として、今後も注目されるべき企業です。

*過去記事「シノプシスの最新AIツール、半導体設計の未来をどう変えるか

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