エヌビディア(NVDA)に代表されるAI半導体のブームによって今年、半導体株は大きく上昇しました。iシェアーズ半導体ETF (SOXX)は過去12ヶ月で40%以上も上昇し、S&P 500やNasdaq-100らの株価指数を大きく上回っています。
しかし、全ての半導体株が好調というわけではありません。アップル(APPL)に納入するモバイル半導体企業でさえも、業界の他の企業に比べてパフォーマンスが劣っているところがあります。その一つがシナプティクス (SYNA)で、同社はコネクティビティとコンピューティング・インターフェイス技術に特化した小規模なファブレス・デザイナーです。
アップルとの提携がもたらす挑戦
アップルとの提携は多くの小規模の半導体企業にとって、モバイルコンピューティング革命の時代において、貴重な収益源となってきました。しかし、アップルの成長が鈍化している現在、その影響はシナプティクスのような企業にも及ぶことになりました。
シナプティクスの未来へのビジョン – エッジAIの採用
2023年9月初め、シナプティクスは投資家向けに、長期的な成長への道筋を示しました。それは、エヌビディアがデータセンターで推進する生成AIの動きを、モバイルコンピューティングに適応させるという、「エッジAI」の採用です。
IoTとパーソナルコンピューティングの未来
今後数年間で、データセンターでの作業はモバイル機器でも行われるようになると予想されています。モノのインターネット(IoT)は、産業機器、スマートホームデバイス、あるいはバーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットが主体になるかもしれません。
ここ数年の計画的な改革により、シナプティクスの売上の60%近くがIoT半導体に関連するものとなり、成長が鈍化すると予想されるスマートフォンの売上は全体の20%程度にまで減少しています。2017年度には、スマートフォン向け半導体はシナプティクスの売上の80%以上を占めていました。
ガートナー社の調査とシナプティクス社自身の予測によると、IoT半導体の市場は今後2027年まで年平均12%成長すると見られています。これは、その間に半導体業界全体で予想される平均成長率7%よりもはるかに高い数字です。
結論 – シナプティクスへの投資は価値あり?
スマートフォンや家電製品の在庫を消化することが第一の課題であるため、2024年はシナプティクスにとって厳しい年になると予想されます。しかし、それでも株価は2024年度の予想利益の27倍、予想フリーキャッシュフローの28倍で取引されています。
来年以降、シナプティクスが成長、特に収益性の高い成長を取り戻すと予想できるのであれば、同社が半導体市場の深刻な低迷を乗り越え始めた今、この株価は同社への投資を考える上で大きな価値を持つかもしれません。
*過去記事「最もパフォーマンスの良い半導体株をバロンズが「買い」推奨」