アーム vs. エヌビディア: 半導体業界の次のビッグスターは?

ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手アーム・ホールディングスが米ナスダック市場に上場申請したことが明らかになり、市場の注目を集めています。

アームの魅力: 半導体の革新

8月21日に米証券取引委員会(SEC)に提出された申請書には、イギリスに拠点を置くアームの魅力的な側面がたくさん記載されています。世界の人口の約70%がアームベースの製品を使用しており、ほぼすべてのスマートフォンの中のチップにアームの技術が搭載されています。そして、同社はチップ設計の革新を続けており、従業員の80%が研究、設計、技術革新に注力しています。

アームの評価: 時価総額の疑問点

SBGは8月にビジョン・ファンドの保有するアーム株25%を161億ドルで取得したことが明らかにされており、そのことからSBGはアームの時価総額を約640億ドルと見ていることがわかります。これは、ロイターなどのメディアが、時価総額を600億ドルから700億ドル程度と報じていることとも一致します。

しかし、アームは直近の会計年度で売上高が26億8000万ドル、純利益が5億2400万ドルという業績を報告しており、株価収益率が約122倍となるこうした評価は高過ぎるとの声も聞かれます。

このように自らを高く評価しているのは、アームが上場後、エヌビディア(NVDA)のような存在になることを目指しているからではと言われています。

ファクトセットによると、エヌビディアの時価総額は約1兆700億ドル、株価収益率は244倍となっています。同社の年間売上高は269億7000万ドルで、直近の会計年度の純利益は43億7000万ドルです。

ただ、アームの思惑はそうであっても、エヌビディアと同様の評価を得られるかには疑問があります。エヌビディアの成長性の見込みについては市場に支持されていますが、アームの売上高と利益はいずれも前年度から減少しています。

エヌビディアとの比較

エヌビディアがデータセンターでAIシステムを訓練するためのツールとして選ばれるようになったグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を販売しているのに対し、アームの中核的な強みは中央演算処理装置(CPU)のライセンス設計であり、スマートフォン市場に大きく依存しています。

現在のAIブームが、コンピューターやスマートフォンなどのデバイス向けのハイエンドチップの需要にどこまで迅速につながるかは定かでありません。

独立系アナリストのリチャード・ウィンザー氏は8月22日、アームのプロフィールはエヌビディアよりもスマートフォン向けチップのスペシャリストであるクアルコム(QCOM)に似ていると書いています。

エヌビディアの株価がAIのブームで急上昇しているのに対して、クアルコムの株価はスマートフォンの販売減少の懸念でほぼ横ばいです。ファクトセットによれば、クアルコムの株価収益率は14.5倍です。

アームの中国リスク

ウィンザー氏はまた、アームの中国へのエクスポージャーに潜在的な懸念があると述べています。同社の中国での販売は、中国の投資家が過半数を所有し、独立して運営されている別会社であるアーム・チャイナが担当しています。

「中国におけるアームのリスクプロファイルは、特に知的財産の中国への移転をめぐる地政学的センシティビティに関しては、クアルコムと同等かそれ以上に大きい」とウィンザー氏は書いています。

アームは提出書類の中で、直近の会計年度において中国が同社の売上高の約25%を占め、前年の18%から上昇したと述べています。ファクトセットによると、エヌビディアの過去1年間の中国からの売上は全体の21%となっています。

まとめ

アームは魅力的な側面を持っている一方で、評価やリスクに関する疑問も多く残されています。市場はエヌビディアと同じような評価をアームに与えるのか、注目が集まる中でのIPOとなりそうです。

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