マイクロソフト(MSFT)の3月期決算は今月末に発表される見込みですが、現在、同社にとっては最高と最悪の時期が交錯しています。決算発表が間近に迫り、投資家は難題に直面しています。
良いニュースとして、マイクロソフトはオープンAIとの強力な関係により、ChatGPTを開発し、生成AIソフトウェアの初期リーダーとして認知されています。同社はBing検索エンジン、Office、Dynamics(企業向けソフトウェア)、GitHub(コード作成ソフトウェア)など、主要なソフトウェアプラットフォームでAI強化バージョンを展開しています。
しかし、その一方で同社は2つの問題に直面しています。1つは、PC市場の低迷で、第1四半期のPC出荷台数が30%減少していることです。これはマクロ経済の低迷、販売チャネルの過剰在庫、IT支出の予算削減、在宅勤務トレンドによるパンデミック時の大量のPC販売が反映されています。
2つ目は、クラウドコンピューティング市場の減速が続いていることです。マイクロソフト・アジュールとアマゾン・ウェブ・サービスの今後数四半期の成長率に関する予測が、高すぎるという懸念が広がっています。
アナリストのコンセンサス予想では、3月期の売上高は前年同期比4%増の511億ドル、利益は1株当たり2.26ドルと予想されています。マイクロソフト社自身は、「インテリジェントクラウド」セグメントで17%~19%、生産性とビジネスプロセスセグメントで11%~13%の成長、そして「よりパーソナルなコンピューティング」セグメントで15%~18%の減少を見込んでいます。
ウォール街のアナリストは、マイクロソフト株の目標株価を引き上げつつ、短期的な見通しに対する懸念を表明しています。オッペンハイマーのティモシー・ホーラン氏、シュティフェルのBrad Reback氏、ウェッドブッシュのダン・アイブス氏、BMO キャピタル・マーケッツのKeith Bachman氏などが、目標株価を引き上げる一方で、成長の鈍化や経済の不安定さによる影響を懸念しています。
特に、ホーラン氏はAIを搭載した新しいソフトウェアが2025年6月期から3~5ポイントの売上増をもたらすと見ていますが、同時に「ぐらつく経済と広がる銀行セクターの不安」によって目先の成長が抑制されると警告しています。同氏は「アウトパフォーム」の格付けを維持したまま、目標株価を280ドルから310ドルに引き上げています。
Reback氏は、3月期の決算が「やや複雑な」ものになりそうだと指摘しており、軟調なPC市場と企業ITバイヤーによる予算削減が影響しているとしています。同氏は、「最大のワイルドカード」はアジュールの成長率がいつ安定するかにあると主張しており、2023年半ばに成長率が20%台半ばで底を打つと予想していますが、景気のさらなる悪化により底が来年にずれ込む可能性もあると指摘しています。同氏は「買い」の格付けを維持したまま、目標株価を290ドルから310ドルに引き上げています。
アイブス氏は、企業向けコンピューティングのワークロードのうち、クラウドに移行したのは50%未満であり、成長の余地が十分にあると主張しています。同氏はまた、AIがマイクロソフトの「the next leg of the growth stool(成長便の次の足)」になると考えています。同氏は目標株価を290ドルから315ドルに引き上げています。
一方、Bachman氏は、生成AIがマイクロソフトの検索事業の成長を後押しすると主張していますが、バリュエーションに基づいて株価を「マーケットパフォーム」と評価しています。ただ、目標株価については305ドルから310ドルに引き上げています。
*過去記事はこちら マイクロソフト MSFT