ポラリス・マーケット・リサーチは、世界の生成AI市場が今後10年間で年間34.2%の成長を記録し、2032年までに2000億ドルの年間売上を創出すると予想しています。この新たな巨大市場においてリーダーシップを握る企業と見られるのが、マイクロソフト(MSFT)とエヌビディア(NVDA)の2社です。
マイクロソフト(MSFT)
オープンAIへの100億ドルとも言われる投資により、マイクロソフトは生成AIブームの最先端を走っています。
オープンAIは最近、GPT-4と呼ばれるチャットボットの最新・最先端バージョンを公開しました。これにより高い精度で難題を解決でき、ユーザーは高度な推論能力で作曲や脚本執筆、さらには会議のスケジュール調整などのタスクを実行できるそうです。
オープンAIは、GPT-4を月額20ドルの定額制プラン「ChatGPT Plus」の利用者のみに提供しています。このプランのユーザーは、サーバーがフルロードになりやすいピーク時でもChatGPTにアクセスでき、問い合わせに対するレスポンスが早くなり、新機能にいち早くアクセスできるようになります。無料版も引き続き提供されますが、より高度な機能を利用できるのは有料版のみとなるようです。
ChatGPTは2022年11月末のサービス開始後、1月に1億ユーザーを突破しており、マイクロソフトとオープンAIはすでにマネタイズ可能な巨大なユーザーベースを手にしています。同時に、オープンAIは複数のブランドと協力し、GPT-4を使ったカスタムソリューションを作っています。
例えば、モルガン・スタンレーは、GPT-3、そして今回のGPT-4を使って社内チャットボットを開発し、資産管理の専門家が巨大なデータプールから必要とする特定の情報を素早く探し出せるようにしました。
チャットボット市場が、2019年にはわずか25億ドルであったのに対し、2027年にはおよそ195億ドルの年間売上を生み出すと予想される理由は、こうした企業向けアプリケーションにあります。
また、マイクロソフトは、Azureクラウドプラットフォーム上でChatGPTの提供を開始しました。この動きにより、開発者や企業は、Dall-E、Codex、GPT-3.5といった他の大規模言語AIモデルとともにChatGPTアルゴリズムを統合し、自社のサービスに統合できるカスタム会話AIアプリケーションやチャットボットを作ることができます。
マイクロソフトは、Azure オープンAIサービスの価格を、1,000トークン(およそ750語)あたり0.002ドルで設定し、3月13日にこのサービスの課金を開始しました。こうして他者より先駆けて動いていることによって同社は、数十億ドル規模のチャットボット市場で優位なポジションを築き、さらには、AIを搭載したBingで検索エンジン分野での存在感を高めることが期待されています。
*過去記事はこちら マイクロソフト MSFT
エヌビディア(NVDA)
マイクロソフトの最近のブログ記事によると、ChatGPTにはエヌビディアの数千にものぼるグラフィック処理ユニット(GPU)が搭載されており、その成功にはエヌビディアのGPUが不可欠だったそうです。
一部の推定では、ChatGPTは少なくとも3万個のエヌビディアのGPUを必要とする可能性があり、同社のトップラインに大きく貢献する可能性があります。ジェンスン・フアンCEOが最近の会見で、過去1年間では1桁台の「小さな」ものだった生成AIがエヌビディアの売上に占める割合が、12カ月後には「かなり大きな」ものになると述べたのも、こうした背景があります。
エヌビディアのグラフィックカードは、膨大な量のデータを並列処理できるため、生成AIアプリケーションに必須の構成要素であり、AIモデルのトレーニングに特に有効であるため、その利用は他のハイテク大手でも進んでいます。
アルファベット(GOOGL)のGoogle Cloudとの提携では、開発者や企業がカスタムアプリケーションを迅速かつコスト効率よく構築できるような生成AIプラットフォームを展開しており、アマゾン(AMZN)のAWSとの提携では、大規模な言語モデルのトレーニングや生成AIアプリケーションの開発のために、エヌビディアのGPUを搭載したクラウド機能が用いられています。
大手だけではなく、最近開始したDGXクラウドによって、生成AIアプリケーションの開発を民主化しようとエヌビディアはしています。同社によると、これは「生成AIやその他の画期的なアプリケーションのための高度なモデルをトレーニングするために必要なインフラとソフトウェアに企業がすぐにアクセスできるようにするAIスーパーコンピューティングサービス」です。
このサービスを利用すれば、高価なハードウェアに投資する必要がなく、エヌビディアから月額料金でインフラをレンタルするだけなので、生成AIアプリケーションの開発を目指す企業の参入障壁を下げることができます。その結果、同社の半導体が生成AIアプリケーションの成長の原動力となる可能性があります。
エヌビディアがエンタープライズGPU市場で91%のシェアを持つという圧倒的な地位を確立していることは、大手クラウドサービスプロバイダーやハイテク大手が、生成AI構想の原動力として同社のGPUに大きく依存していることを示しています。
これから登場する生成AIという巨大市場から利益を得ようと群がるほとんどの企業がエヌビディアを利用していることを考えると、エヌビディアは今後何年にもわたってAI銘柄のトップであり続ける可能性があります。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA