デジタルオーシャン 成長の鈍化で利益重視へ

中小企業向けクラウドコンピューティングサービスを提供するデジタルオーシャン(DOCN)は2月16日に第4四半期決算を発表しました。第4四半期の売上は前年同期比で36%と急増しましたが、2023年の売上高の成長率が23%に減速するガイダンスを同社は示しました。

これはクラウドコンピューティングの顧客が支出を削減している現状を反映したもので、2024年までに年間売上高10億ドルを達成するという目標を2025年までに達成するに修正することも同社は発表しています。

同時に、もうひとつの目標であった2024年までにフリーキャッシュフローマージンを20%以上とするについても修正を行いましたが、こちらは逆に2023年中に達成すると1年早めることを明らかにしました。

これは厳しい経済環境を変えるために同社ができることはほとんどないため、代わりに自らの努力で達成できるコスト削減を早期に行うことでフリーキャッシュフローの生成を加速させることに注力し、今年中に利益目標を達成するというものです。

この計画の一環として、テック業界では一般的になりつつあるレイオフが行われることになり、デジタルオーシャンは決算報告とともに、従業員を約11%削減することを発表しています。また、給与などの見直しによる人件費の削減も予定されているそうで、この計画が完了すれば、年間約6,000万ドルのコスト削減が見込まれています。

同社はまた自社株買いにも力を入れています。2022年に6億ドルを自社株買いに費やした後、今年は新たに5億ドルを投じることが認められています。注目すべきは、2024年にさらにフリーキャッシュフローの125%もの金額を自社株買いに充てる見込みであることを明らかにしていることです。

顧客の支出減による逆風にさらされた2022年でしたが、収益性は大幅に改善されました。フリーキャッシュフローは通年で3倍以上の7780万ドル(売上高の約13.5%)となっています。同社の見込みのとおりフリーキャッシュフローマージンの目標値20%を達成すれば、今年度はおよそ1億4000万ドルのフリーキャッシュフローを生み出すことができることになります。

このフリーキャッシュフローの急増には、出来るだけお金をつかわないようにする同社の方針が大きく寄与しています。同社は、口コミや役に立つコンテンツによって潜在顧客を引き寄せることを顧客の獲得戦略の基本にしており、昨年、営業とマーケティングに費やした費用は売上のわずか14%で、一部のハイテク企業が費やす費用と比べるとごくわずかでしかありません。

また、売上構成の中身を変えることも収益性の改善に効果があります。デジタルオーシャンの売上に占めるストレージサービスの割合はわずか10%ですが、同社はこの割合を倍増させられると考えています。最近買収したバックアップツールのSnapShooterもその一助となりそうです。

中小企業はクラウドインフラに年間約980億ドルを費やしており、デジタルオーシャンは長期的に大きなビジネスチャンスに恵まれていると言えます。しかし、短期的には中小企業は支出を削減しており、デジタルオーシャンはこの嵐を乗り切るために収益性と効率性に焦点を移さなければなりません。

*過去記事はこちら デジタルオーシャン DOCN

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