配当銘柄への投資方法は様々ですが、見逃されがちなのが、配当金を長期的にじっくりと増やしていく方法です。
これは、増配が続く銘柄を何年も保有し、最初に株式を購入したときと比べて利回りが大きくなることを目指すやり方です。「成長→収入」と呼ばれるこの戦略は、しばらくは配当金を再投資に回し、ある程度利回りが大きくなった後、配当収入を得るやり方に切り替えます。
例えば、5年前にユナイテッドヘルス・グループ(UNH)の株を購入したとします。5年前(2018年2月15日の終値)に購入した場合、その時の購入株価は226.02ドルでした。当時の年間配当額は1株3ドルで、配当利回りは1.33%でした。
その後5年間で、同社の年間配当額は120%増の1株6.60ドルに、株価は117%増の491.25ドルになりました。同じ期間のS&P500の上昇率(配当を除く)が52%でしたから、ユナイテッドヘルスの上昇率がいかに目覚ましかったかが分かります。
2023年2月15日の終値で新たに投資する場合、ユナイテッドヘルスの株式の配当利回りは1.34%で、5年前とほぼ同じでした。しかし、5年前に購入した株の利回りは、現在2.92%となっています。
これが「成長→収入」と呼ばれる戦略の具体的なやり方と効果です。そして、注目すべきはこの戦略を行うことができる銘柄が多く存在することです。
S&P500構成銘柄で2023年2月15日の終値で配当利回りが1.00%以上だった銘柄は319あります。
この中から2023年2月15日の終値までの5年間で株価が100%以上上昇し、かつ過去5年間で配当金の増加率が少なくとも2倍になっている企業に絞りこんでみると、以下の14の銘柄がヒットしました。株価の上昇率順に並べると以下のようになります。
会社名 | ティッカー | 5年間の株価上昇率 | 5年間のトータルリターン | 配当金増加率 | 現在の配当金利回り | 5年前の配当金利回り | 5年前に購入した株式に対する配当金利回り |
モノリシック・パワー・システムズ | MPWR | 356% | 376% | 233% | 0.75% | 1.03% | 3.44% |
イーライ・リリー | LLY | 329% | 371% | 101% | 1.35% | 2.88% | 5.79% |
MSCI | MSCI | 283% | 301% | 263% | 0.97% | 1.03% | 3.72% |
トラクター・サプライ | TSCO | 247% | 272% | 281% | 1.72% | 1.56% | 5.96% |
CDW | CDW | 198% | 216% | 181% | 1.11% | 1.18% | 3.31% |
ラムリサーチ | LRCX | 180% | 204% | 245% | 1.33% | 1.08% | 3.72% |
スチールダイナミクス | STLD | 167% | 201% | 119% | 1.08% | 1.32% | 2.89% |
プール | POOL | 162% | 175% | 170% | 1.04% | 1.01% | 2.72% |
ディーア | DE | 146% | 165% | 100% | 1.17% | 1.44% | 2.88% |
ブロードコム | AVGO | 141% | 188% | 163% | 3.03% | 2.78% | 7.31% |
ダラー・ゼネラル | DG | 136% | 147% | 112% | 0.95% | 1.06% | 2.23% |
ロウズ | LOW | 123% | 144% | 156% | 1.95% | 1.70% | 4.35% |
DRホートン | DHI | 120% | 134% | 100% | 1.01% | 1.11% | 2.22% |
ユナイテッドヘルス・グループ | UNH | 117% | 134% | 120% | 1.34% | 1.33% | 2.92% |
5年前は多くても3%余りの配当利回りだった銘柄が今や高配当銘柄に変身していることがこの表からは分かります。
もちろん、これは結果論で、5年前にこうした変身が自明だったわけではありません。どのような長期戦略であれ、個別銘柄を選ぶには、企業の戦略や今後数十年にわたって競争力を維持できる可能性を考え、先を見通す必要があります。
容易にできることではありませんが、現在は高くない配当利回りの銘柄であっても、長期的な成長が実現できる銘柄であれば、5年後に多くの不労所得をもたらしてくれる高配当銘柄に生まれ変わることを知っておくことは配当を意識した投資戦略を考える時に大いに参考になります。