マイクロソフト ChatGPTがもたらす広告収入の増加

マイクロソフト(MSFT)は、検索エンジン「Bing」にChatGPTの技術を融合し、現在Googleに大きく引き離されているインターネットサービスを、人工知能との新しいコミュニケーション手段へと変貌させようとしています。

同社は2月7日、検索エンジン「Bing」にオープンAIが開発したChatGPTを搭載して7日から順次利用できるようにすると発表しています。「AI を搭載した新たな Microsoft Bing と Edge が検索を再発明 ― ウェブの副操縦士

この動きはアルファベット(GOOGL)のGoogleにとって大きな脅威と受け取られているようで、Googleは、マイクロソフトの発表に先立って、2月6日にBard(バード)と呼ばれる独自のチャットボットを一部のユーザーに公開し、今後数週間で一般に公開するとCEOのサンダー・ピチャイ氏がブログで発表しています。

両社のせめぎ合いがこれからどの様に展開していくか目を離せませんが、ここに来て注目されているのがマイクロソフトのインターネットの広告収入です。インターネット広告収入といえば、アルファベットやメタ・プラットフォームズ(META)が二大巨頭。3番目にアマゾン(AMZN)が伸びてきて注目を集めていますが、それまでデジタル広告の話題とはほぼ無縁であったマイクロソフトが今回の検索エンジン強化を機に広告収入を増やすのではと見られています。

マイクロソフトの広告事業は、2022年暦年で180億ドル近い売上を記録したと、マイクロソフトのエイミー・フッド最高財務責任者がこの前の電話会議で初めて明らかにしました。

これは2021年暦年の広告収入から80%も増加したもので、マイクロソフトの幹部は1年前にAT&T(T)からXanderを買収したことで収入が大きく増えたと述べています。

180億ドルというと巨額に思えますが、ビッグテックの世界ではそうではありません。2022年のグーグルの広告収入は1755億2000万ドルであり、リンクトインからの広告収入も含むマイクロソフトの合計の10倍近くになっています。メタは2021年に1136億ドルの年間広告収入をあげていますし、アマゾンの広告ビジネスでさえ、2022年にマイクロソフトの2倍の規模である377億4000万ドルの売上を得ています。

マイクロソフトのWindows、デバイス、および検索ビジネス担当の最高財務責任者であるPhil Ockenden氏は、「検索広告市場で1ポイントでもシェアを拡大すれば、当社の広告ビジネスにとって20億ドルの収益機会になる」と述べています。

20億ドルの収益増はマイクロソフトの今年度の年間売上予想総額の1%未満に過ぎないレベルですが、5000億ドルの規模があるとされるインターネット広告市場で微々たる存在であるマイクロソフトの広告事業にとっては大きな数字です。

DAデビッドソンのアナリスト、Gil Luria氏は「市場の大きさとマイクロソフトの現在のシェアを考えると、(今回の検索エンジンの強化は)かなりのアップサイドの源になると見ている」と顧客向けメモに書いています。同氏はまた、この技術はマイクロソフトのクラウドコンピューティング・サービス事業「Azure」をさらに後押しすると考えているとも述べています。

調査会社のスタットカウンターによると「Bing」のシェアは世界で3%、米国でも7%弱にとどまっており、オープンAIの技術が検索市場におけるGoogleの圧倒的な支配を完全に覆すわけではないと思われますが、近年ライバルがシェアを伸ばす中、マイクロソフトは広告収入を大幅に伸ばすことができなかっただけに、人工知能アプリChatGPTを用いた今回の検索ビジネスの強化は、同社にとって広告収入を増やす大きなチャンスと言えそうです。

*過去記事はこちら マイクロソフト MSFT

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