アップスタート 年初から30%を超える上昇、1年後には株価2倍の可能性も

2023年が始まってアップスタート(UPST)の株価が急上昇しています。1月12日の市場では特に上昇が目立ち、終値は11.75%高の17.21ドルでした。これで株価は年初来で33%の上昇となっています。

アップスタートの株価は2022年に暴落しました。2021年につけた史上最高値から一時は97%も下落してしまいました。この下落の理由は、米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派的な金融政策です。2022年6月、米国のインフレ率が9.1%と40年ぶりの高水準に達したことを受け、FRBは過去40年で最速のペースでフェデラル・ファンド・レートを引き上げることで対応しています。

アップスタートは、人工知能を使って高度に自動化された方法で融資を引き受けるプラットフォームで、従来の金融システムで「見過ごされている」借り手に手を差し伸べることを使命としている会社ですが、このFRBによる金利の引き上げが業績を直撃しました。

アップスタートにとって、金利上昇は好ましくありません。アップスタートが仲介するローンの買い手は金利の急上昇により、必要なリターンがもっと見通せるようになるまで、証券の購入を控えます。

また、ローンの借り手である消費者や企業も金利が上昇すると借入意欲が減退するほか、金利の上昇がもたらす景気後退が借り手の返済能力に影響を与え、ローンの延滞を増やすことにもなりがちです。

2022年はこうした脆弱性が明らかになり、アップスタートは引き受けを縮小し、一部のローンを自社のバランスシートで保有せざるを得なくなって、損失を計上するまでに至ってしまいました。

こうした両面からのリスクが、昨年アップタートの株価が暴落した原因でしたが、新年に入り、状況が変わりそうなデータが相次いで発表されています。

1月6日、米国労働統計局から発表された12月の雇用統計は、米国が緩やかなペースで雇用を増やし続け、22万3000人増加したことを示しました。一方、賃金は0.3%の上昇にとどまり、過去1年間に見られた高すぎる上昇率から緩やかになっています。

そして12日に発表された12月の消費者物価指数では、ヘッドラインインフレ率が-0.1%、変動の激しい食品とエネルギー価格を除いた「コア」インフレ率が0.3%の上昇となりました。この数字は予想通りであり、インフレが確実に緩やかになっていることを示しています。

金利が元の水準まで下がらないとしても、インフレと金利が安定するという見通しだけでも、アップスタートにはプラスに働くと見られます。ローンの買い手は、ローンに必要なハードルのレートをある程度見通せるようになり、より多くの買い手がアップスタートのプラットフォームに戻る可能性があります。

一方、ひどい不況にならずにインフレ圧力が緩和されれば、借り手は仕事を維持したまま物価の安定の恩恵を受けられるので、ローンのパフォーマンスにはプラスに働くと予想されます。12月の賃金上昇率が0.3%、インフレ率が-0.1%ということは、労働者の「実質」賃金が先月は0.4%上昇したことになります。

今週のデータは「ソフトランディング」の見通しにとって非常にポジティブなものでしたが、世界経済はまだ危機を脱したわけではありません。この先、さまざまなデータが出て不安定な状況が続くことが予想されますが、アップスタートの株価は、ポジティブな経済データが出るとともに上昇する可能性が高いと予想されます。

昨年暴落したにもかかわらず、シティグループのアナリスト、ピーター・クリスチャンセン氏は、アップスタートの目標株価を33ドルに設定しています。これは1年後に現在の株価から2倍近く上昇することを同氏が予想していることを意味します。

*過去記事はこちら アップスタート UPST

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