ペット関連商品をオンラインで販売するチューイー(CHWY)は、米国のこの分野におけるマーケットリーダーです。
チューイーは、米国最大の電子商取引ペットケア小売業者である。ペットフードやおやつ、ハードグッズおよびペット用医薬品のカテゴリーにわたる2021年の売上高は$89億となっている。2011年に設立され、2017年にPetSmartによって買収された。ペット用品のスーパーストアチェーンの下で数年間発展した後、2019年に独立系企業として上場した。ペットフード、おやつ、市販薬、医療処方、ならびにクレート、リーシュ、ボウルなどのハードグッズから売上を生み出している。
出所:マネックス証券銘柄スカウター
アメリカの家庭にとって、ペットはとても大切な存在となっています。アメリカで犬や猫を飼っている人の95%がペットを家族の一員とみなしており、69%は健康や福祉に役立つペットフードのために追加料金を支払うことを望んでいると答えています。
米国のペット市場は、2024年までに1450億ドルに成長すると予想されています。パンデミック以前は、オンライン販売はそのパイの27%を占めるに過ぎないと推定されていました。しかし、COVID-19がすべてを変えてしまいました。現在では、2025年までに、その53%がオンラインで購入されると予想されるようになっています。
チューイーはこうしたサービスを提供する業者として米国市場におけるトップ企業となっています。事業の基盤となっているのは、「オートシップ」プログラムとフルフィルメント・ネットワーク。この二つが他社を寄せ付けない、いわゆる「モート(堀)」となって同社をリーダーの座につけています。
チューイーの「オートシップ」プログラムは、ペットフードの自動配達機能を提供し、49ドル以上の注文で送料は無料となっています。その上、遠隔健康管理オプションを無料で利用することができます。そんなプログラムが無料で提供されていることから、大多数の顧客がサービスを利用しています。
無料であるわけは、このプログラムが収益を上げるためではなく、スイッチングコストを生み出すことを狙いとしているからです。スイッチングコストとは、現在利用している製品やサービスから、別の製品やサービスに乗り換える際に負担する金銭的、心理的、手間などのコストのことを意味します。
経営陣は「オートシップ」を提供することで、他の業者へ乗り換えるコストを高くし、顧客がチューイーから離れないようにしています。2022年第2四半期、同社の全売上高のうち、「オートシップ」の顧客が占める割合は73%となっています。
「オートシップ」はチューイーのもうひとつの「堀」、フルフィルメント・ネットワークによって支えられています。アメリカの人口の80%は夜までに配達ができる範囲内に住んでおり、2日以内の配達の範囲内ではほぼ100%と言われています。チューイーには14のフルフィルメントセンターがあり、迅速な配達ができる力を持っています。これに対抗できる規模の配達能力を持っているのはアマゾン・ドットコム(AMZN)くらいのものであり、ニッチなマーケットであるペットケア関連市場でこれに対抗できるライバルは今のところ見当たりません。
この2つの「堀」はかなり強力ですが、チューイーはそれだけには頼っていません。今後市場を広げる可能性のある新しいサービスをいくつも提供しています。
飼い主が必要なときにインターネットを通じて獣医師免許を持った人と話すことができる遠隔医療、処方箋を一元管理するために使用される動物病院用ソフトウェア、トゥルーパニオン(TRUP)との提携によるペット保険、などがそうした新しいサービスです。
これらの付帯サービスは、現在のところ売上高のごく一部に過ぎません。しかし、2019年以降55%のペースで成長しており、全売上高の17%を占めるまでになっています。これらの新サービスが今後さらに成長し、新しい「堀」となる可能性は十分にあります。
米国経済を取り巻く環境は厳しくなっていますが、そんな状況下でもペットへの支出は減っていません。チューイーでは、おもちゃなどの「ハードグッズ」の購入は9%減少していますが、フードや薬などの消耗品の購入は前年比16%増となっています。
四半期別の売上高は2018年4月期より一貫して増収を続けており、2022年7月期の売上高は24億3100万ドルと前年同期比で12.8増となっています。営業利益は2022年4月期1900万ドル、7月期2200万ドルと2四半期連続で黒字を計上しています。
もちろん、チューイーにもリスクがあります。足元では在庫が過多になっている問題がありますし、玩具などの不要不急の製品の売上が減っています。顧客の定着率もまだコロナ以前の水準には戻っていません。現在は強力に見える「オートシップ」プログラムも、より低価格の製品を販売するライバルの登場によりその力が衰え、顧客数が減少し、顧客一人当たりの支出も減少するかもしれません。
しかし、そうしたリスクを考慮してもチューイーは将来大きく成長していく可能性に満ちています。ペットの飼い主が必要とするすべてのものを、玄関先までお届けすることを目指している同社は、米国でペットを飼う人にとってのデフォルトの選択肢となっています。
「オートシップ」プログラムとフルフィルメント・ネットワークを基盤に新しいペット関連サービスを加えていくことで、チューイーが、2024年には800億ドル近くになると推定されている米国のオンライン・ペット関連市場におけるワンストップショップとなる可能性は非常に高いと思われます。
2022年1月期のチューイーの売上高が89億ドルあまりであったことを考えると、同社の伸び代は大きく、株価は中長期的に大きく上昇することが期待できます。