アマゾンの未来を牽引するAWSの実力と可能性

アマゾン 今後数年で株価2〜3倍の可能性ありとバロンズが評価」で紹介しました4人のアナリストの価値評価で大きく別れたのがアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の評価でした。

3億ドルの価値があるとしながらも保守的に見て2億ドルと評価したレッドバーン・リサーチのアナリスト、アレックス・ハイスル氏は最もAWSの価値を高く見ています。

投資家たちは、アマゾンのクラウド価値をさらに引き出す方法の1つとして、AWSのスピンオフについて長く議論していますが、AWSのアダム・セリプスキー最高経営責任者は今年初め、アマゾンに事業を分割する計画はないと述べています。

しかし、ハイスル氏はAWSのスピンアウトは「今のところテーブルの上にはないかもしれない」が、クラウド部門が成長を続けるにつれて、この先起こり得ることだと書いています。

ハイスル氏がAWSがこれほどまでに高く評価しているのは、同氏がアマゾンのクラウドを深く理解しているからです。AWSはマイクロソフトのAzureやGoogle Cloudと同列で語られますが、この3つのサービスにはそれぞれの強みがあるとハイスル氏は語っています。

同氏は最近マイクロソフトを「買い」でカバレッジし出したばかりですが、Azureの強みは、誰もが思い描くように、マイクロソフト自身のソフトウェアを実行することにあると書いています。一方、Google Cloudについては、機械学習と人工知能に特に長けていると同氏は評価しています。

こうした2社と比べて、同氏はAWSを、生のデータストレージ、データベースソフトウェア、アプリケーション、分析などのプラットフォームを持つ、総合的に最強のクラウドプロバイダーと見ています。

特に、AWSは最もコスト効率の良いデータストレージの選択肢を提供し、インターネット上の膨大なデータから価値を生み出すための最も強力なソフトウェアツールも提供しているところに強みがあるというのが同氏の評価です。

クラウドは、まず「データレイク」と呼ばれる中央ストレージサービスから始まり、そこには最も原始的な形で情報が格納されています。そのデータレイクの上に、生のデータをより価値のあるものにするための様々なサービスが接続されており、アマゾンは200以上のアプリケーションを提供しているとハイスル氏は指摘しています。

アマゾンの場合、そのデータレイクは「S3」として知られています。2006年3月14日のパイの日に発表されたS3は、Simple Storage Serviceの略語です。データを大量に保存するための低コストな方法を提供することがS3の役目であり、デジタル版のセルフストレージ・ユニットです。S3はこれまで華々しい成功を収め、アマゾンがこれまでに作った単一のものの中で最も成功したとものと言っても過言ではないと経済誌バロンズは評価しています。

昨年のS3の15周年に、AWSのチーフ・エバンジェリストのジェフ・バー氏はブログで、S3には現在100兆以上のデータオブジェクトが入っており、地球上の全ての人間に対して13000以上、「宇宙の約2兆個の銀河の1つに対して50以上のオブジェクトが入っている」と書いています。

ハイスル氏は、S3が今後も大きく成長することを期待しています。2030年まで年率40%以上で売上を拡大し、その間のオブジェクトの増加率は60%近くに達すると予測しています。同氏は、S3だけで1.5兆ドルの価値があると考えており、これはアマゾンの現在の時価総額よりも高い額です。また、S3は今年AWSの売上の20%を占め、2030年には50%近くになると予測しています。

「組織はまだモダンなアーキテクチャを実装し、機械学習などのより高度な技術を適用する初期段階にある。彼らがテクノロジー導入の次の段階に進めば、データの相乗効果が生まれるだろう」とハイスル氏は6月下旬に書いています。

同氏は、S3が提供するストレージの効率性により、AWSはライバル企業よりも安価なクラウドコンピューティングの選択肢になると主張しています。クラウドコンピューティングが情報技術予算全体に占める割合が大きくなるにつれ、顧客のコスト意識はますます高まっていくと、ハイスル氏は述べています。

ガートナー社は、パブリッククラウドサービスの世界市場は現在5000億ドル近くあり、来年には6000億ドル近くまで成長すると推定しています。シナジー・リサーチ・グループによると、AWSはクラウドインフラストラクチャの世界市場の3分の1を支配しているそうで、これはAzureより50%多く、Google Cloudの3倍以上の規模です。

AWSの構築に長年取り組み、実績を上げたジャシー氏がCEOに就任したことは、アマゾンがクラウドを会社の将来と見ていることを強く示しています。

*過去記事はこちら アマゾン AMZN

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