インテルは配当を減らすべきとバロンズが提言

  • 2022年6月29日
  • 2022年6月29日
  • BS余話

経済誌バロンズが経済的苦境にあると見られるインテル(INTC)に対し配当金を減らす決断をすべきと提言する記事を掲載しています。

インテルの株価は6月28日、2.2%下がり、今年に入ってからの下落幅は27%に達しています。

ほんの数カ月前までは、パット・ゲルシンガーCEOの唱える、より速い製品開発とファウンドリビジネスの拡大というインテルの再建戦略は軌道に乗っていたように見えていました。

1月には、同社の取締役会が現金配当を5%増やし、年間ベースで1株当たり1.46ドル、総額で約60億ドルの配当を実施しています。インフレ圧力にもかかわらず、経営陣は4月に通期ガイダンスを再確認し、下半期のPC売上高の回復を予測しました。当時の2022年見通しは、売上高760億ドル、設備投資270億ドル(前年比40%以上増)、フリーキャッシュフローは約15億ドルのマイナスとなっていました。

現在、この予測は達成不可能に見えるとバロンズは評しています。今月初め、インテルのデビッド・ジンスナー最高財務責任者(CFO)は投資家会議で、マクロ環境と部品供給の問題が、今期は予想よりはるかに悪いと述べました。同氏のコメントや、実際に小売店での値引き活動が活発化していることなどを見ると、同社は予想を下方修正しなければならない可能性が高いとバロンズは見ています。

バロンズからの問い合わせに対して、インテルは、通期の業績見通しをめぐるリスクについてコメントを避け、電子メールによる声明で、「健全で成長する配当のために引き続き尽力する」と述べているそうです。

事業環境よりもさらに厄介なことがあるとバロンズが指摘しているのが、インテルの主力製品の業績が低迷を続けていることです。

インテルは長年にわたり収益性の高い事業であったデータセンター・サーバー市場でのシェアを失いつつあるそうで、同社のデータセンター部門の2021年の売上は約260億ドル(前年比ほぼ横ばい)だった一方で、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のデータセンター部門の売上は、より高性能なチップのおかげで2倍以上に増加したとバロンズは見ています。

モルガン・スタンレーのアナリスト、ジョー・ムーア氏は先週のメモで、「AMDはサーバーCPU市場の最も性能を重視する部分で、インテルを抜いて市場リーダーになったと見ている」と書いています。
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最新の動向は、AMDが今後もシェアを拡大し続ける可能性を示唆しているとバロンズは判断しています。数週間前、インテル幹部のサンドラ・リベラ氏は、同社の次世代サーバー・プロセッサー「サファイア・ラピッズ」の立ち上げが予定より遅れることを明らかにし、性能において「ジェノア」と呼ばれるAMDの次期サーバー・チップを上回らない可能性があることを認めています。

AMDのリサ・スーCEOは6月27日、バロンズとの電話インタビューで、ジェノアの開発が今年後半の発売に向けて順調に進んでいることを確認し、サファイア・ラピッズに対する市場における位置づけについて楽観的な見方を示しました。

「データセンターはAMDにとって最大の賭けである 。我々は、ジェノアが性能(の観点)、ワットあたりの性能、および総所有コストからリーダーシップを発揮すると考えている。それは、我々の顧客からも聞いていることだ」とスー氏は述べたそうです。

さらにインテルは他の製品カテゴリーでもつまずいていることをバロンズは指摘しています。同社の新しいグラフィックス・チップのラインナップは、遅れに苦しみ、競争力もないように見えるとのこと。広く読まれている技術系ウェブサイト『Techspot』は、インテルのグラフィックス製品は、その性能の低さ故に、今年「最も圧倒的なハードウェアのリリース」かもしれないと酷評しているそうです。

2月の投資家向け説明会でジンスナーCFOは、インテルは2023年と2024年に1桁台半ばから後半の売上成長を前提に、ブレークイーブンのフリーキャッシュフローを生み出す計画だと述べました。また、先週23日に開催されたバロンズ主催のインベスティング・イン・テック・コンファレンスでは、同社の資本支出計画は今後5年間で1000億ドルを超えると述べています。

しかし、もし売上が減少すれば(最近のトラブルでそれは不可避とバロンズは断じています)、なんらかの手段で予算削減が行われない限り、この現金予測は的外れになるため、何か手を打たねばならないとバロンズは主張しています。

先週、インテルは政府関係者に対し、国内半導体生産と研究に対する520億ドルの奨励金を含むCHIPS法が通過しなければ、オハイオ州に建設する数十億ドルの新製造拠点への投資ペースは縮小されるかもしれないと言明しましたが、縮小を行う前にまず最初に俎上に載せるべきは配当金だとバロンズは指摘しています。

インテルが株主への支払いに充てている年間60億ドルを、研究開発や資本支出投資の拡大・維持に使った方が良いとバロンズは主張しています。今後4年間配当を減らすことで、インテルは240億ドル近い余剰資金を手に入れ、イノベーションに投資することができるのがその理由で、エヌビディア(NVDA)が昨年投じた研究開発費総額が53億ドルだったことから考えても、その効果が大きいことがわかるとしています。

「配当がなくなれば、インテル株を売却する配当志向の投資家も出てくるかもしれないが、収益性が改善されれば、いつでも配当は再開できる」とし、「インテルの配当は終了すべきであり、それが賢明で正しい行動だ」とバロンズは主張しています。

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