マイクロソフト(MSFT)のパブリッククラウド事業である Azureは、市場リーダーのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が持つ大きな市場シェアに徐々に食い込みながら、突出した成長を続けています。そんな状況を見て、あるウォール街のアナリストは、他のアナリストがAzureの潜在能力を過小評価していると考えています。
クレディ・スイスのアナリストであるフィル・ウィンスロー氏は、6月16日に発表した67ページの調査報告書の中で、マイクロソフトがウォール街の予想よりも「速く、大きく」成長できると考える理由を詳しく説明しています。ウィンスロー氏は、企業がクラウドを利用する方法において、マイクロソフトの強みを発揮できるような変化が起きていると見ています。
3月期のAWSの売上高は184億ドルで、前年同期比37%増、一方 Azureの売上高は113億ドルで、46%増となりました。金額はAWSの方が大きいものの、Azureの方が成長が早く、ウィンスロー氏はこの傾向は続くと考えています。
10年以上前の大不況の後、ITバイヤーの間ではアプリケーションをクラウドに移行することに焦点が当てられ、多くの場合AWSでホストされるサブスクリプションベースのSaaSモデルが広く採用されたと同氏は指摘しています。これは、特定のアプリケーションをクラウドに移行するだけでなく、ITインフラストラクチャの構造を大幅に変更することを意味します。
ウィンスロー氏は、レガシーなオンプレミス・アプリケーションと IT オペレーションに依存することの欠点がパンデミックによって明らかになり、クラウド・コンピューティングの重要性が高まったと述べています。PC、タブレット、プリンタ、ITサービスを除いたパブリッククラウドの支出全体が、2024年までにオンプレミスのIT支出を上回ると同氏は考えています。
同氏は、Azureがこのシフトから大きく恩恵を受け、AWSとの「売上格差を縮め続ける」一方で、市場シェアで第3位であるアルファベット(GOOGL)の Google Cloudとの差も広がると見ています。
ウィンスロー氏は、Azureが「マイクロソフトの持続的な成長と、コンセンサス予想の大幅な上方修正をもたらす」と予想しており、同氏の考えでは、すでに自社のデータセンターでマイクロソフトの技術に大規模な投資をしている企業顧客は、戦略的なクラウドプロバイダーとしてAzureを選ぶ可能性が高いということです。
同氏は、ウォール街がすでにマイクロソフトの見通しについて「おおむね肯定的」であることを認めた上で、Azureの成長機会による通年のインパクトがウォール街のモデルに適切に反映されていないと主張しています。
同氏は、AzureがAWSよりも早く、5億ドル、10億ドル、50億ドルといった主要な売上ランレートのマイルストーンに到達していることを指摘し、Azureが現在推定105億ドルのランレートで推移していることから、ここからのコンセンサス予想は過度に保守的であるように見えると述べています。
ウォール街では、Azureの成長率は3月期に報告された46%から徐々に減速し、2025年6月に終わる第4四半期には30%を下回ると見ていますが、ウィンスロー氏は、2025年までの複合成長率は41%近くに達し、はるかに力強い成長を遂げると見ています。
同氏のAzureに対する強気の見方は、マイクロソフトが今後5年間は少なくとも10%台半ばから後半の売上成長率を記録し、1株当たりの利益とフリーキャッシュフローは、規模の拡大と継続的な自社株買いによって、10%台後半から20%の範囲で成長できるという同氏の説を裏付けるものです。
ウィンスロー氏は、「このような持続的な成長と収益性は、コンセンサス予想や評価にはまだ適切に反映されていないと考えている」とレポートを結んでいます。
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