アップスタート 政府機関との関係終了が意味するもの

アップスタート(UPST)と米国の政府機関である消費者金融保護局(CFPB)との関係が終了したことが最近明らかになりました。具体的には、CFPBが認めている “ノーアクションレター(NAL)”のリストからアップスタートを削除することに合意したというものです。

ノーアクションレターの意味合いは、特定の金融テクノロジー企業に対して、公正貸与法に違反したとしてCFPBから起訴されることを免除するというものです。これは、規制当局からの強制力を恐れることなく、金融サービス分野で責任あるイノベーションを行う技術系企業を奨励することを目的とした仕組みです。

アップスタートは4月、ローンの引き受けアルゴリズムに新たな変数を追加する予定であることをCFPBに伝えましたが、CFPBは、この変更を分析・検討する時間が必要であると回答。その結果、アップスタートは、より迅速な方法で変更を行うため、NALの終了を要請し、CFPBはこの要請を認めという経緯のようです。

アップスタートの公共政策・規制関連業務責任者であるナット・フープス氏は、最近のブログ記事で、アップスタートの 「要請の動機は、経済が大きく変化する時期にリスクモデルを正確かつ最新に保つ必要があったこと」だ述べています。

フープス氏はまた、「CFPBがノーアクションレター(NAL)プログラムなど、個別企業との規制の取り決めを重視していない と考えたため、アップスタートはこの動きを選んだ」とも述べています。

今年に入ってからの金利の高騰によって、アップスタートや他の多くの企業は早急な対応をとることが求められています。そのため、アップスタートは、新たなマクロ条件を考慮し、アップスタート・ローンを購入する投資家が、景気後退の可能性を含む経済環境においてどのようなリスクを負いたいかを考え、AI引受アルゴリズムとローン価格の更新に迅速に動かなければならなくなったのです。

CFPBが今回の関係終了において強調していることは、CFPBは「アップスタートのモデルを支持したことは一度もない」ということです。NALはあくまでもアクションを起こさないという意味で、それが支持を意味するわけではないとのことです。また、一部の研究で、CFPBがアップスタートの引受モデルの一部の開発を支援したことになっていることについて、事実ではないと否定しています。

さらに、同庁は、以前NALのリストに載っていたことによって、アップスタートの新モデルが信用機会均等法に準拠していることを意味すると一般市民が信じることを懸念しているとも述べています。

「NALが推奨と誤解されるリスクを考慮すると、CFPBはNALを責任を持って維持するために、アップスタートのモデルやモデルの変更についてより厳格な監視と評価を行う必要がある」と、CFPBは書簡で述べ、アップスタートがこのプロセスによって引受モデルを迅速に変更できなくなると考えたのは正しいことだと付け加えています。

今年の第1四半期決算において、アップスタートは投資家に対し、本来なら投資家に売却するはずのローンをバランスシート上に保持していることを明らかにしたため、株価の暴落を招きました。こうした事態の再現を避けるために、投資家が引き受けたいリスクの量とそのリスクを適切に価格設定する方法を早急に再調整したいとアップスタートは考えたと思われます。

その結果、NALという言わば政府機関のお墨付きのようなものを手放したことを不安視する意見もあるようですが、急激に変化しつつある経済環境の中で投資家の引き受け率が急速に低下することを座視することよりも、それを改善すべく迅速に動くことの方を選んだアップスタートの判断を私は支持したいと思います。

*過去記事はこちら アップスタート UPST

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