エヌビディア(NVDA)の株価がこのところ大きく下落しています。先月の株式市場では絶好調で、12%上昇し、年初来の下落で痛手を受けていた投資家に一息つかせていましたが、4月に入り20%近く下落し、3月に上昇した分が全て吹き飛んでしまいました。
このところの大きな下落の理由は、ゲーム用のパーソナルコンピューター(PC)に使われる消費者向けグラフィックス処理装置(GPU)の需要が弱まる可能性があることをアナリストが指摘したことにあります。
投資銀行会社のベアードは、ロシアがゲーマーと暗号通貨の採掘者の両方が使用するGPUの主要な買い手であると言われているため、ロシアへの制裁が消費者向けグラフィックスカードの需要減速につながったと指摘しています。
ベアードのアナリストTristan Gerra氏は、エヌビディアの目標株価を360ドルから225ドルに引き下げ、格付けを「アウトパフォーム」から 「ニュートラル」に引き下げました。
Gerra氏は、西欧やアジアでの供給過剰に加え、中国などの主要市場の需要が減速しているため、顧客がGPUの注文をキャンセルし始めたと推測しています。その結果、GPUの価格は下がり始めているとし、同アナリストは、グラフィックスカードの需要低下が、今年下半期の同社の売上にマイナスの影響を与える可能性があるとみています。
トゥルイストもコンピューターやその他の消費者向け機器に使われるチップの需要が短期的に鈍化すると予測しており、目標株価を347ドルから298ドルに引き下げました。
暴落して次のネットフリックスになるといった予測が出るなど、今のエヌビディアはネガティブな見方をされることが多くなっています。
確かに、ゲーム事業はエヌビディアの最大事業であり、昨年度の総収入の46%を占めていることを考えると、目先のグラフィックスカードの供給過剰はエヌビディアにとって良い兆候ではありません。
しかし、エヌビディアがGPUのアップグレードサイクルから利益を得る立場にあるため、減速が一時的なものになりそうだという事実があることも見逃せません。
エヌビディアは2022年の投資家向けプレゼンテーションで、インストールベースの71%が古いアーキテクチャに基づくグラフィックスカードを使用していると説明しました。具体的には、エヌビディアのユーザーのうち、2018年後半に発売されたRTXシリーズのグラフィックスカードを使っているのはわずか29%です。新しいRTXシリーズのカードは、多くのユーザー使用している古いGTXシリーズのカードよりも大きな性能向上をもたらしています。
さらにエヌビディアはAmpereアーキテクチャを採用した最新のグラフィックスカードをすでに発売しており、古い製品を使っているユーザーの買い替えを期待しています。グラフィックスカードのアップグレードサイクルは、数量の増大と価格設定の改善という組み合わせにより、長期的にはエヌビディアのビデオゲーム事業を大きく後押しすると予想されます。
さらに、自動車市場における見通しの改善と、活況を呈するデータセンターのGPU分野における同社の優位性により、エヌビディアは長期的にトップクラスのハイテク株であり続けることができるはずです。
最近の大幅な下落により、エヌビディアの株価収益率(PER)は55.8まで下がり、これは同株式の5年間の平均収益倍率である58.5よりも低くなっています。また、エヌビディア株がPER60となった2019年以降で最も安い評価額で取引されていることも注目される点です。2020年と2021年には、それぞれ85と90の倍率を記録し、より割高な水準で取引されていました。
もちろん、エヌビディアは市場全体と比較するとまだ割高です。例えばNasdaq 100のPERは31.8となっています。しかし、その成長ペースを考えると、この比較的高い評価を正当化することができます。
2022年度(2022年1月30日に終了)の売上が61%増の269億ドルに達したのに続き、エヌビディアは2023年度第1四半期の売上を81億ドルと予想しており、これは前年同期比43%増となります。そして、その利益は、前年同期の1株当たり0.91ドルから1.29ドルに急増すると予想されています。さらに、アナリストは、2023年度の売上を30%増の348億ドルになると予想しています。
当面はグラフィックスカード市場の低迷が逆風になるかもしれませんが、今後5年間の年間売上成長率は30%と予想されており、複数のカタリストを持つエヌビディアは、下落局面で購入する価値のある銘柄であると思われます。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA