メタバース銘柄として注目を集めるマターポート

マターポート(MTTR)は、物理的な空間を寸法的に正確でフォトリアリスティックなデジタルツインに変えることができる空間コンピューティングプラットフォームを販売しています。

これにより、物理的な空間を管理するために必要なデータインサイトを顧客に提供することができます。マターポートは、株式公開直後に、フェイスブック(FB)やアマゾン(AMZN)と戦略的提携を結びました。

これらの提携は、個人投資家やウォールストリートのアナリストを興奮させました。それは、マターポートのテクノロジーが、ビッグテックのメタバースへの願望の中で、中心的な役割を果たすことが明らかになってきたからです。

マターポート社は今年初め、ゴアズ・ホールディングスVIとのSPAC合併を完了し、ナスダックに上場しました。マターポートの年初来の株価収益率は126%で、S&P500の収益率26%を大きく上回っています。

アルファベット傘下のグーグルが、物理的な道路地図をデータ豊富なデジタルマップに変換し、位置情報サービスを提供したのと同様に、マターポートは建物をデジタル化し、撮影した各空間の潜在能力をよりよく理解できる環境を構築します。世界中で建物をデータ化しているマターポートは、物理的な空間という構築物の世界で、事実上のビジネス・インテリジェンス・エンジンになりつつあります。

同社はこれまで、製品収益(=ハードウェア)に大きく依存してきました。しかし、マターポートはIPO以降、ソフトウェア面への投資を積極的に行っています。その結果、2021年1~9月までのソフトウェアの売上は前年同期比で54%増となっています。ソフトウェアはマターポートにとって利益率の高い機会であることから、ソフトウェアが収益に占める割合がさらに大きくなれば、同社は事業への再投資を増やすことができるはずです。

このような売上の変化は非常に早く起こっています。2021年第3四半期時点では、ソフトウェアのサブスクリプションが総売上高に占める割合は53%と、ハードウェア(31%)に比べて最も大きくなっています。

このため、投資家は、現在の2021年第2四半期から2021年第3四半期にかけての総売上の成長率が前四半期比で10%であるのに対し、総売上ベースではより劇的な成長が見られるようになると考えています。しかし、それらのソフトウェアサブスクリプション収入の増加の成果が現れるまでには長い道のりがあり、時間がかかることを認識する必要があります。

2021年10月、フェイスブックはメタ・プラットフォームズとしてリブランドすることを公に発表しました。この発表の中で、フェイスブックのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、インターネットの次の章は、ユーザーがオンラインで見るだけでなく、体験と対話するような、より没入感のあるメディアになると述べています。この概念は、メタバースと呼ばれています。

この目的を達成するために、フェイスブックはマターポートとのコラボレーションを発表しました。このコラボレーションでは、現実世界の環境から生成された住宅、商業施設、市民のスペースで構成される1,000個のマターポートデジタルツインを公開します。このライブラリは、ロボットが物理的な世界の複雑さを理解し、それに対応できるようにすることを目的とした具現化型AIの研究を進める上で、大きな役割を果たします。

フェイスブックとの提携に加えて、マターポートは先日、アマゾンのAmazon Web Services(AWS)マーケットプレイスでのプラットフォームの提供を発表しました。マターポートは、AWSと協力して、マターポートのデジタルツインを活用したエンタープライズソリューションを提供します。

このパートナーシップの一環として、AWSは「IoT TwinMaker」という新サービスを開始しました。これは、IoT(Internet of Things)やスマートビルディングなどのデジタルツインを開発者が簡単に作成できるようにすることを目的としています。

マターポートをローンチパートナーとして迎えたAWS IoT TwinMakerでは、デジタルツインデータのコンテクスト化、インサイトやアナリティクスの収集、さらには空間のリアルタイムおよび時系列レプリカへのバーチャルアクセスが可能となります。

 

株式を購入するかどうかを検討する際には、常にバリュエーションを念頭に置くことが重要です。この記事を書いている時点での時価総額は60億ドル近くとなっており、過去12ヶ月間の売上が約1億800万ドルであることを考えると、現在はかなり高い評価額で取引されています。マターポートの第3四半期の売上は、前四半期比で10%の伸びにとどまり、このような高評価を得ている銘柄に期待される成長率を下回っています。

マターポートのような売上規模が小さく不採算の事業は、評価の観点から株価が激しく乱高下することが予想されます。その割高な株価を考えると、フェイスブックやアマゾンとの提携やメタバースのアイデアによる将来的な価値の多くは、すでに株価に織り込まれていると考えた方が良さそうです。

メタポートが長期的な勝利者となり、メタバースを強化する重要な要素となる可能性は十分にありますが、現在の財務状況や成長率、さらには潜在的な金利上昇やインフレ懸念に関連する広範な市場環境を考慮すると、株価は引き下げられる局面に来ていると考えられ、当面は様子を見た方が良いかもしれません。

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