ファストリー 「禍転じて福となす」株価急騰

ファストリー(FSLY)については、このところいろいろ書いてきました。

ネット障害を起こしたファストリーの株価が急騰
ファストリーが障害の原因を発表
ファストリー ネット障害が顧客の損失につながる可能性

同社のソフトウェア設定のバグにより6月8日に起こった世界規模での大規模なシステム障害の影響を受けて、ファストリーの株価は普通とは異なる動きをしたことで注目されました。

同社のネットワークサービスの約85%が約1時間にわたって停止したこの障害。普通ですと株価の暴落を招いてもおかしくない出来事でしたが、市場は逆の反応を示しました。

投資家はこのニュースに飛びつきましたが、実際にはファストリーの株価は暴落するどころか、逆に10%以上も上昇したのです。

この障害により、ファストリーのサービスを利用しているニューヨーク・タイムズ、ツゥイッチ、CNN、BBC、ショッピファイ、ピントレスト、アマゾン、レディット、eBayなどが運営するウェブサイトに一時的にアクセスできなくなりました

このアクセスできなくなった顧客の顔ぶれが投資家を驚かせたようです。ファストリーはこれまで企業顧客336社のうち43社しか公表していませんでした。

しかし、6月8日の障害の後、これまで未公開だったいくつかの有名顧客の名前が明らかになったのです。ファストリーが世界のインターネットエコシステムの中にこれほどまでに浸透しているとは知られていなかったため、それが投資家を興奮させたと思われます。

売上げに対する価格比で見ると、ファストリーの株価評価は昨年10月の50前後から現在は17と、かなり割安になっています。

気になるのは、キャッシュフローがマイナスであることですが、それは、同社が売上の34%という驚異的な割合を研究開発の促進に充てているためです。

現段階では、競争の激しい環境で収支を均衡させることよりも、顧客と収益を拡大するために研究開発に力を注ぐことの方がはるかに重要です。さらに、同社にはこのような損失を補うために11億ドル以上の現金と投資があります。

ファストリーのコンテンツ配信サービスは、顧客に愛されています。同社は常に140%のネット・リテンション・レートを維持しており、これは、既存顧客からの支出が解約率をはるかに上回り、成長していることを意味します。

ドナルド・トランプ前大統領がプライバシーの問題を理由に、アメリカ企業によるTiktokとの取引を禁止するとの大統領令を出した後、同社の最大の顧客であったTiktokを所有する中国のバイトダンスとの契約を失ったファストリーですが、今回のトラブルは「禍転じて福となす」ということわざをまさに体現するような出来事になったようです。

インターネットのエコシステムにおける同社の重要性、堅調な売上成長、一流のサービスが改めて認識されたことで、同社は今買うべき価値のある株と考えられているようです。

6月14日の市場で同社株は前日比7.5%増の58.46ドルと急騰しています(米国東部夏時間12:10PM現在)。

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